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  • 執筆者の写真家登みろく

どの子にも―7/16くらデモ「入管法」問題学習会に参加して

更新日:2023年8月13日


どの子にも涼しく風の吹く日かな 飯田龍太


最近この俳句をよく思い出します。季語は「涼し」。夏の暑い中でも、木陰や家の中に入ったときにふと感じる涼しさのことです。夏の昼間を夢中になって遊んで、額に汗を浮かべた子どもたちが、そのひとすじの風に笑顔になる―そんな景色が浮かびます。


しかし、もしこの句に注釈がついていたらどうでしょう。例えば、「※ただし、在留資格を持つ者に限る」と。

当日は満員御礼でした。

入管法をめぐる現状についてきちんと知りたい。それが西山温子弁護士の勉強会に申し込んだきっかけであるのは言うまでもありません。


入管法改正反対のtweetに、差別的で攻撃的で耐えられないようなリプライがいくつも返ってくる。そんな罵声をただ見て見ぬふりするなんてできない。倫理的・論理的にきちんと間違いが指摘できるようになりたい。そして、入管の悪行と入管法の改悪を止めようと努める人たちの力になりたい。そのためには、まず正しい知識を得ねばなりません。想像で語れば、却って誰かを傷つけ得るからです。


まずは、入管法の対象と目的や、難民条約における難民の定義を西山弁護士に説明いただき、問題の基本のキが理解できたことは、今後の各々の活動の心のよりどころになると感じました。問題と状況を的確につかむためには、どんな人がどんな意図をもって編集したか分からない過激な動画を見るよりも、その道の専門家に話を聞く方がはるかに効率的で健全です。


また、勉強会の中で西山弁護士ならではと感じたのは、ワークショップです。参加者には実際に使用されている難民認定申請書を6分で読ませ、難民審査官として申請者にインタビューをさせます。これはもちろん「難民をほとんど見つけることができない」と発言した柳瀬房子難民審査参与員が1件あたり6分ほどで審査をしたと推計されることに依っています。

西山先生の明快な講義!

私は読書時の集中力にはかなり自信がある方です。しかも、西山弁護士の用意してくれた難民認定申請書のサンプルには回答が簡潔にまとめられています。しかし、質問量も多く、出来事を時系列に整理するためによくよく読み込む必要がありました。これはもう、6分の素読では太刀打ちできません。さらにもし、これが読みにくい字や聞き慣れない言葉で記されていたなら、回答や背景もさらに複雑であったなら、6分では不可能です。むしろ、ひとりの人間の人生がかかっているのだと思うと、いくら時間があってどれだけ悩んだとしても、正しい判断ができたなどと思うことはできないかもしれません。


このワークショップによって、参加者は西山弁護士が「6分」という言葉を聞いた時の衝撃をわずかながら追体験することができました。6分、たった6分ですか、と。

ワークショップは盛り上がりました!

勉強会の最後、私はかねてより思い悩んでいたことについて西山弁護士に直接質問しました。それは、改正案が衆参両議院を通過した後に見た、難民審査参与員で国会参考人となった方の「与党はどんな法案でも数の論理で通すことができる。よって、今回の政府与党案を確実に阻止するには、修正協議でできる限り中身を変えるしか方法はない」にもかかわらず、「廃案一択派の弁護士や活動家は、上記の修正案は全く話にならないと揶揄し、修正案を全面的・徹底的に批判」し、結果改悪案が通って「2,000人近い庇護申請者や仮放免の子ども達300人とその親の人生」を救えなかったという主張でした(参考:橋本直子「押し通された「改正入管法」の舞台裏 国会参考人が問う」)。この記事を読んだ日、私はショックでほとんど眠れませんでした。私は、デモに行くべきではなかったのか?と。


西山弁護士に直接質問できる―そんな機会はめったにありません。自分なりに答えらしきものを用意し、勉強会当日、思い切って西山弁護士に意見を伺いました。こんな質問をしたら怒られるのではないかと少し怯えながら。でも、西山弁護士はその場ですぐに教えてくれました。「そうした政治的駆け引きは考え得るが、弁護士としてそして人として、複数回難民不認定処分を受けている人たちの叫びを無視できない。そもそも修正案の内容じたいが不十分で、譲歩できるようなものでもなかった。且つ、これまでの入管の行いを見れば、修正案が採択されてそれがきちんと守られるかどうかも怪しい」とのお話でした。私自身、デモの現場での非正規滞在者の方々や、難民認定が下りない人々の話を聞いて、「今回は修正案で妥協するしかない」などと言うことができようか、という思いがありました。


西山弁護士の意見を受けて、私はまた声を上げることができるようになりました。しかし、やはりまだまだ勉強が足りなかったということも痛感せざるを得ません。修正案についても、再度自分なりに調べ自分の言葉でもっと語れるようにならなければと思いました。他にも、諸外国ではどのような議論が行われているのか、改悪案の施行を止めるために何ができるのか、そもそも今のような状況になる前に何ができたのか、次はどうすべきなのか…。知りたいこと、知るべきことは山積みです。


人は完璧ではなく時は流れて時代も変わります。だから我々は常に勉強し続けなければならなりません。自分が差別に加担していないか、誰かの苦労にフリーライドしていないか、悪政を見ないふりなどしていないか。


子どものころ「学校では勉強ではなく、勉強する方法を学ぶのだよ」と言い聞かされて、そんなものかと思いませんでしたか。でも、大人になっても勉強している人はどのくらいいるのでしょう。仕事に使うための語学や資格勉強ではなく、己と社会を真に豊かにするための勉強をしているはどのくらいでしょう(そもそも、そんな時間もお金も、労働によって既に奪われてしまった人もいます)。


世の中の問題を正しく理解することは、我々ができる最初の一歩です。大きな社会の渦の中でその一歩は小さく見えます。しかし、その一歩が大地を踏み固め、大きな道を作ります。我々は間違えて転んでも、また立ち上がる方法を学んできたはずです。


入管は今も大きな過ちを繰り返し続けています。奪われた命・生活、そして今も少なくない人々が命を脅かされている。本来、この社会の目指すところは、だれもが幸せになることです。どんな理由があっても、国に命を脅かされるようなことがあってはならないのです。差別的扱いを受けてはならないのです。 ともに勉強を始めましょう。この国において、涼しい風がどの子にも吹くように。 家登みろく( 俳人。師系・中村草田男の俳句結社「萬緑」入会。「萬緑」終刊に伴い「森の座」所属。同人) 


板橋区以外からの参加も多く、入管法問題への関心の高まりを感じました。




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