2度不調、1社落札、業者未調査、着工即増額――志村小124億円工事 入札をめぐる7つの事実
- TEAMくらデモ
- 1 時間前
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板橋区立志村小学校・志村第四中学校の小中一貫型学校改築工事。総額124億円超にのぼるこの巨大公共事業の入札過程について、関係者への取材と情報公開請求の結果をもとに検証した。
以下に示すのは、すべて板橋区自身が認めた事実、区が公式に回答した内容、そして情報公開請求に対する区の決定通知に基づくものである。推測は一切含まない。事実だけを並べる。
事実1 入札は2回連続で不調だった
令和6年(2024年)夏に行われた第1回入札は不調。同年秋の第2回入札も不調。板橋区のホームページでは「入札不調により完成は1年程度延期となる見込み」と公表された。
120億円規模の学校建設に、手を挙げる業者がいなかった。
事実2 3回目の入札で、1社だけが落札した
令和7年(2025年)2月、3回目の入札が実施され、4月3日に結果が開示された。落札したのは村本建設株式会社(本社・大阪府大阪市)。1社のみの落札である。
一般競争入札でありながら、結果的に競争が成立していない。
事実3 落札価格と予定価格の差は1%未満だった
予定価格は122億8千万円。落札価格は121億円。その差はわずか1億8千万円、率にして1%未満である。
2度の不調を経た3回目の入札で、なぜこの価格での落札が可能だったのか。 予定価格にきわめて近い金額での単独落札は、公共調達の透明性の観点から検証を要する。
事実4 もう1社は入札後に辞退した。理由は不明
入札にはもう1社、新日本建設が参加していた。しかし、同社は入札後に辞退している。
情報公開請求で辞退理由を求めたところ、区の回答は「辞退届を保有していない」というものだった。理由は「システムの仕様」。
120億円超の公共工事で、入札参加者の辞退届を行政が保有していない。
事実5 区は落札業者について何も調べていなかった
村本建設に関する選定評価の文書を情報公開請求で求めたところ、区から届いたのは「公文書不存在通知書」だった。
不存在の理由は、「調査等を行っていないため、区で保有していない」。
村本建設は、格付Aの業者として入札参加資格を満たしていた。区の立場は、資格を満たし
落札した以上、それ以上の調査は行わないというものである。
事実6 落札業者の履歴
村本建設の沿革を、公開情報に基づいて確認する。
1995年、5,900億円の負債を抱えて会社更生法を申請。当時、史上最高額の倒産として報じられた。2004年に会社更生手続き完了。その後も2009年に公共工事をめぐる汚職事件、2016年に所得隠しおよび水増し発注事件が報じられている。
こうした経歴は、いずれも公開情報として確認できる。しかし区は、落札業者の経歴について独自の調査を行っていない(事実5参照)。
また、村本建設の大規模工事の実績として確認されているのは、清水建設とのJV(共同企業体、出資比率7:3)による約180億円規模の案件である。 今回の志村小・志村四中工事は約121億円(当初契約額)であり、単独施工としては同社にとって過去最大級の規模となる。
事実7 着工後、地下水で工法変更、1.6億円の増額
令和8年(2026年)第一回定例会に提出された議案説明資料によれば、志村四中敷地の掘削工事で「予期せぬ地下水量」が確認された。原設計の工法では「崩落等の危険により基礎工事以降の工事が不可能」と判明し、工法変更が必要になった。
契約金額は約1億6,452万7,000円増額され、当初の122億6,200万8,000円から124億2,653万5,000円になった。
2度の入札不調を経て、ようやく1社が落札した工事である。それが着工早々に想定外のリスクに直面し、億単位の追加費用が発生した。
ここで思い出してほしい。この計画はそもそも、「志村小の現地改築には擁壁の関係で工期6年かかる」という地盤調査を根拠に始まっている。
その調査と同じ水準で行われたはずの志村四中敷地の調査が、地下水すら見抜けなかった。ならば、「工期6年」の根拠もまた、問い直されなければならない。
並べた事実が問いかけるもの
以上の7つはすべて事実である。
区が公式に認めた事実であり、区が「不存在」と回答した記録であり、区が議会に提出した公文書に記載された数字である。
ここから浮かび上がる問いは、自ずと明らかだろう。
120億円を超える公共工事の入札で、辞退届が保存されない仕組みに問題はないのか。格付による資格審査が制度の基本であるとしても、2度の不調を経た1社のみの落札という異例の経過のもとで、落札業者の経歴を一切確認しないまま契約を結ぶことが、住民への説明責任として十分といえるのか。
予定価格との差が1%未満の単独落札に、区は何の疑問も持たなかったのか。
板橋区は、子どもたちが毎日通う学校を、この入札で決まった業者に、この金額で、建てさせる判断をした。その判断の過程を検証する責任は、住民にではなく、行政にある。
私たちは事実を問うている。

