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【緊急連載・第1回】消された「イエナプラン」――板橋区教育ビジョン、策定直前の不可解

  • 執筆者の写真: TEAMくらデモ
    TEAMくらデモ
  • 12 時間前
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更新日:数秒前

この記事の要点


  • 板橋区教育委員会は、2026年度から2035年度までの10年間を計画期間とする新しい教育ビジョン「MIRAI SCHOOLいたばし ―教育ビジョン2035―」および関連計画群を策定した。その素案は、2025年11月7日から28日までパブリックコメントに付された。

  • パブリックコメント時点の素案で、教育計画の柱の一つに「イエナプラン教育の要素を取り入れた教育活動」を明記し、解説コラムまで掲載されていた。

  • ところが2026年3月31日に公表された策定版では、「イエナプラン」という固有名詞が事実上すべて消えている。

  • パブリックコメントを経て原案が確定した後の「最終的な精査過程」で削除が決まったとされ、手続きとして極めて異例である。

  • 党派・会派を超えて区議(立憲民主党の中妻じょうた議員、自民党の内田けんいちろう議員)がそれぞれ問題提起している。これは、党派を超えた区政の手続き問題である。


素案の段階では、これだけ大きく書かれていた

板橋区教育委員会は、2026年度から2035年度までの10年間を計画期間とする新しい教育ビジョン「MIRAI SCHOOLいたばし ―教育ビジョン2035―」および関連計画群を策定した。その素案は、2025年11月7日から28日までパブリックコメントに付された。


パブリックコメントを受けて、2025年12月に教育委員会が公表したのなかでは、ある特定の教育思想が明確に位置づけられていた。イエナプラン教育である。


付属する事業計画書「小中一貫教育の推進」(事業番号002)の令和8年度欄には、次の一文がはっきりと書かれていた。


「①全ての学校園における、イエナプラン教育の要素を取り入れた教育活動の展開」

「全ての学校園における」――これは区立のすべての幼稚園・小学校・中学校を指す。板橋区の教育施策全体の方向性として、イエナプラン教育が柱の一つに据えられていたことが分かる。


さらにパブコメ実施以前の素案、パブコメ実施後の案には、「コラム:イエナプラン教育について ~子ども一人ひとりが輝く学び~」と題された解説コラムが掲載されていた。創始者ペーター・ペーターセンの写真入りで、次のように宣言している。

「『子どもを真ん中に据えた教育』。これは、板橋区が今後さらに力を入れていく教育の姿です。その一つの参考になるのが『イエナプラン教育』です。イエナプラン教育の理念はとてもシンプルで、『人が幸せに生きるための教育』をめざすものです。」

コラムは、「ブロックアワー」と呼ばれる自己選択型学習、異学年混合クラスでの実践、縦割り活動との重なりなど、具体的な特徴にも言及している。区が素案段階で、この教育思想を相当の覚悟をもって位置づけていたことが読み取れる。




ところが、2026年3月31日に公表された策定版のプレスリリース、および区公式発表文を確認すると、驚くべきことが分かる。



「イエナプラン」という固有名詞が、登場しない。


「縦割り学級による異年齢交流」「個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実」「子どもを真ん中に据えたさまざまな教育活動」といった、イエナプラン教育を想起させる表現は残っている。しかし、その「参考」とされていたはずの教育思想の名前そのものが、策定版からは姿を消している。


区が素案段階で区民に向けて「今後さらに力を入れていく教育の姿の参考」と明言した教育思想の固有名詞が、最終版では消えている。これは極めて異例の事態である。


2025年12月に板橋区が公表した案にあったイエナプランの言葉が、2026年3月に策定された文章では、「子どもを真ん中」に変わってしまっている。ちなみに、文科省のルールに従っていれば「子供」になるはず。この点も注目だ。
2025年12月に板橋区が公表した案にあったイエナプランの言葉が、2026年3月に策定された文章では、「子どもを真ん中」に変わってしまっている。ちなみに、文科省のルールに従っていれば「子供」になるはず。この点も注目だ。


パブリックコメントとは何か


パブリックコメント制度は、行政が計画や条例の素案を広く公開し、区民の意見を募ったうえで最終案をまとめる手続きである。単なる形式的な手順ではない。行政の意思決定に住民が参加するための、民主主義の基本的な仕組みの一つである。


素案を読んで意見を寄せた区民は、当然、素案に書かれた内容が原則として最終版の基調となることを前提としている。もちろん寄せられた意見を踏まえて修正が加わるのは当然だ

が、それはパブリックコメントの趣旨からの修正である。


ところが今回の「イエナプラン削除」は、パブリックコメントで寄せられた意見を反映した修正とは位置づけにくい。素案段階では「イエナプラン教育の要素を取り入れる」という積極的な方針が示されていたのであり、それに対する批判的意見があったとしても、通常はコラムや表現の調整で対応するのが妥当な範囲である。計画の柱となる固有名詞そのものを事実上全削除するというのは、パブリックコメントの通常の結果からは考えにくい対応である。


しかも、この削除がどのような経緯で決まったのかは、区民に明示されていない。区議会の所管委員会である文教児童委員会も、策定版公表のわずか一週間前、3月24日になってようやく、この変更を知らされたとされる。関係者によれば、「最終的な精査過程(3月中旬)」で削除が決まったという説明があったようだが、パブリックコメント終了(2025年11月28日)から策定版公表(2026年3月31日)までの約4か月の間で、具体的にどの時点で、誰が、どのような権限で判断したのか、その内実は明らかにされていない。



超党派の議員が問題提起している


この不透明な削除に対して、区議会では党派を超えて疑問の声が上がっている。


立憲民主党の中妻じょうた区議は、ご自身のブログ(2026年3月11日付「給食よ、食材価格高騰に負けるな!――予算委員会文教児童分科会レポート」)で、削除の3週間前の3月10日に行った予算委員会文教児童分科会での質疑を公開している。中妻区議はイエナプランモデル校の具体像や異年齢学級の実施可能性などを区に質し、その内容は板橋区議会において初めてと言ってよい、イエナプラン教育の実践論に踏み込んだ本格的な議論だった。中妻区議自身は、区側の答弁について「いずれも明瞭な答弁は得られませんでした」と記している。


一方、自民党の内田けんいちろう区議も、ご自身のX(旧Twitter)アカウント(@kenichirouchida)で、イエナプランに関わる板橋区の対応について投稿を行っている。立場の異なる会派の区議がそれぞれにこの問題に関心を寄せているのは、極めて注目に値する。


イエナプラン削除問題は、特定党派の政治的争点ではなく、区政の手続きと透明性に関わる問題である。区民全体にとっての問題だと、私たちは考える。



何が起きたのか


ここまでが事実関係の第一層である。パブリックコメントを経た素案から、計画の柱であったはずの固有名詞が、説明なく削除された。区議会の所管委員会にも、公表直前の3月24日まで知らされなかった。超党派の議員がそれぞれ問題提起している――。


しかし、この事態の不可解さを本当に理解するには、もう一歩踏み込まなければならない。

なぜなら、この計画を所管する板橋区教育委員会のトップ、すなわち長沼豊教育長は、日本におけるイエナプラン教育の第一人者と呼ぶべき人物だからである。日本イエナプラン教育協会の事務局スタッフであり、同協会認定の「日本イエナプラン専門教員資格」を保持し、日本初のイエナプラン認定校である大日向中学校の初代校長を務めた人物である。


その長沼教育長のもとで、なぜ「イエナプラン」という言葉が区の計画から消されたのか。次回「専門家の沈黙──長沼豊教育長は、なぜ容認したのか」でこの問いに迫る。

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