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PTAに入っていない私のPTA豆知識 その1| なぜPTAは「会員限定サービス」ができないのか


 前回は PTAには入らないという方法もあるよ、という話を書いた。


 それを読んで、「そうか、入らなくてもいいのか」と思う一方、周りはPTA会員ばかりだし、PTAに入らないと困ったことになるという話もちらほら聞くから、大変なことになったらどうしようと思う人もいるだろう。


 入らなくてもいいよという文章を書いたのに、困った時にどうしたらいいかは自分で考えてねというのはあまりにも感じが悪い。だから、具体的に予想される問題の傾向と対策を書いていこうと思う。これは避難訓練のようなもので事前準備がしてあれば不意打ちを食らうよりも冷静に対応できるだろう。また、是非PTA役員や学校管理職、教育委員会の人たちにも読んで欲しい。PTA非加入を選択する人の考え方が分かるかもしれない。文句ばっかり言っていると思ったけど、根拠があるのだと知れば、不要な対立が避けられるかもしれない。



 PTA非加入を選んだ時に起きる問題はどこの学校もたいてい同じで、PTAからの配布物は配りませんとか、登校班には入れませんなどが代表的なものだ。それ以外にもいろいろあって、それぞれ特有の問題があるけれど、大抵のことには「会員限定サービスはできない」という点と、「個人情報保護」という二つの論点で解決できる。だから、法律なども出てきてちょっとややこしいけれど、まずはこの二つのことをしっかり伝えたい。長くなるので、まず、今回は「会員限定サービスはできない」という点について説明したいと思う。


 世の中のほとんどの団体は会員限定サービスをしている。例えば、地域の囲碁クラブは、集めた会費で場所を借りたり碁盤や碁石を所有したりして会員だけのために活動している。スイミングスクールは、特別な場合を除いてスクールの会員だけが泳ぎ方を習うことが出来る。だからPTAだって会員限定の活動をしたって問題なさそうにも思える。「PTA会員じゃない人の子どもにも同じ対応をしろと言うのは都合よすぎるよ。それじゃ、何のために私たちは会員になっているの?会員と非会員の区別がなくなっちゃうじゃない。」という声が聞こえてきそうだ。そう思うのももっともだ。他の団体は会員限定サービスをしているのだから。


 しかしPTAには他の団体と大きく違う点がある。それは学校が教育を目的とした公共施設であり、PTAはその学校を活動の場としていて学校施設の優先的な使用を認められているということだ。それでは、まず、学校施設はどのような場合に使用できるのか、法に照らし合わせて確認してみることにする。


 

学校教育法137条

学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他の公共のために利用させることができる

 

 この条文から分かることは、学校施設は学校外の団体も利用できるけど、「学校教育上支障のない限り」「公共のため」という条件があることだ。子ども達がまだ学校にいる間に施設を貸したら学校教育上差しさわりがあるから借りられないだろうし、公共のためとは言えない宗教活動や営利活動には使用できないだろう。施設を使うためには①か②が必要だ。


① 学校施設の使用は「学校教育上支障のない限り」「公共のため」の場合に使用できる

また、当たり前のことだが、②も可能だ。

② 学校は教育のために学校施設を使用できる


 地域の野球チームは、①を根拠として授業のない日に学校の校庭を借りることが出来る。PTAもこれと同じように学校の授業がない時に学校施設を借りることが出来る。しかし、PTAは学校施設の一部をPTA室として独占的に使っているし、授業時間内の活動もしている。これは①では説明がつかないがどうなっているのだろう。


 では、学校内で、学校の教育時間内で学校外の人が活動する例は他にはないか。ないわけではない。たとえば、学校の授業では地域の方がミシンの使い方をサポートをしてくれたり、自分の仕事の話を聞かせてくれたりすることがある。「じゃあそういうものできないの?」というとそれは違うだろう。学校外の人が活動したとしても、それは学校教育の一環だから②に該当する。


 このように、もしPTAが学校の子ども全体のための教育活動の一部を担っているということであれば、PTAの活動は②を根拠として、優先的な施設利用ができることになる。しかし、これが会員限定サービスの場合、学校教育の一環とは考えられずPTAが優先的な施設利用が出来る根拠がなくなってしまうのだ。


 もちろん、冒頭で書いた囲碁クラブやスイミングスクールのように、PTAが学校施設を一切使用せず、何かを配布する場合にも学校を通さずに学校の外で配布するなら、会員限定サービスを実施出来るだろう。または、他の団体同様、学校を使用する時には児童全員の下校後に、その都度使用許可を得て活動すれば会員限定サービスができるだろう。


 しかし私の知るPTAは、現状、学校施設を優先的に使用し、配布物を公務員である教員が配布している。他団体ではありえないような優先的な待遇は、それが教育活動の一環であるということが根拠であり、全生徒児童を対象にしないとその根拠がなくなってしまう。これがPTAが「会員限定サービスができない」理由だ。


 もしもPTA退会を申し出たときに、登校班には入れないとか、PTAからの配布物は配りませんなどと言われたら、「そうなると、PTAが学校施設を優先的に使用できる根拠がなくなってしまいますが、そのような理解でよろしいでしょうか。私の根拠はこうです。あなたの根拠は何ですか?」と聞いてみてほしい。そして合理的な根拠であれば是非私も知りたいので教えてほしい。


 最後に付け加えると、できれば法律を持ち出さなくてもPTAは子ども全体の活動をして欲しいと願っている。「うちの子たちだけ」のための活動なら、公教育である学校内ではなく、学校の外でしていただくわけにはいかないでしょうかね?会員でない私が言うと非難を受けそうだけど。全ての子ども達のための活動を自発的に行うからその活動が歓迎されるのだと思う。


 私は法律家ではないので、法律に詳しいわけではない。今回は以下の論文を参考に書いています。PTAに関心のある方は是非お読みになることをお勧めします。


参考論文

日本司法書士連合会の月報司法書士 2020年2月号 ( No.576 ) 

<特集 学校と法律>

首都大学東京教授 木村草太




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