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  • 執筆者の写真高橋大輔(三園在住 会社員)

永井幸寿 『よくわかる緊急事態条項Q&A』(明石書店、2016年)

更新日:2021年2月25日


「よくわかる緊急事態条項Q&A」(永井幸寿 著 明石書店)







永井幸寿氏プロフィール

・アンサー法律事務所

・TEAM防災ジャパン








コロナ禍のさなか、今までさほど政治に興味を持たなかった方が政府や自治体のコロナ対策、特に「緊急事態宣言」に関心を持たずにはいられない状況にあると思います。


家族・友人・知人・同僚などと話していても、「緊急事態宣言」とそれに伴う「休業要請」は自分の生活に直接影響があるだけに話題に上る機会も増えているのではないでしょうか。


一方、この機に乗じて改憲論議を一気に進めようという不穏な動きもあります。安倍総裁は5/3に例年通り日本会議の集会にオンラインでメッセージを寄せ、その中で緊急事態条項に触れたとのことです。


ナチス・ドイツがワイマール憲法の国家緊急権を悪用して独裁体制を作り上げたことは有名で、政府に権限を集中させる緊急事態条項を憲法に明記することは、国家権力の暴走を防ぎ国民の人権を守る意味で、極めて慎重に扱われなければなりません。


では、日本において憲法に緊急事態条項を新設する必要は本当にないのでしょうか?

例えば、家族や友人に以下のように問われたら、皆さんはどのように回答しますか?


 

Q1 外出自粛要請が出たのになかなか徹底できないのは、法律では『要請』しかできず、拘束力がないから。憲法に緊急事態条項を新設すべきではないか?

Q2  世界102か国の憲法には緊急事態条項が明記されている。主要国でこれがないのは日本くらいなのだから早急に議論すべきでは?

Q3  東日本大震災の際に、大量の瓦礫が発生し、これを処分するのに憲法の財産権が障壁になったとのこと。同じ憲法に緊急事態条項があれば財産権に制限を加えることができるようになるのでは?

 

Q1は比較的簡単ですが、Q2とQ3は、もしいきなり聞かれたら「うっ!」と詰まってしまうのではないでしょうか?

憲法と緊急事態条項に関する著者の基本スタンスはざっくりまとめると以下の通りです。


  1. 憲法は国家権力の暴走から国民の人権を守るためにある。

  2. 国家とは国民の集合体ではなく、政府・国会・裁判所を指す。

  3. 国家緊急権は国家の暴走を許す危険なツールであり、日本国憲法の建付けにそぐわない。

  4. 災害時等の緊急事態宣言による一定の私権制限は必要だが、それは現行法で充分に対処可能である。

それでは知りたがり屋さんのために、Q2とQ3について、ちょっとだけネタバラシしましょう。

A2  「みんなやってるよ~!」に弱いのが日本人。でも、まずは諸外国の憲法はそれぞれどんな緊急事態条項を持っているのか調べるのが先です。調べてみると条文制定に至る歴史も内容も国によってさまざまであることがわかります。本書ではドイツ・フランス・イギリス・アメリカの例が紹介されています。

A3  日本国憲法で財産権について書かれているのは29条です。その29条の中に答えがあります(本書では「29条」とは書いていません)。そして、瓦礫の処理については災害対策基本法によって対応可能なのです。

詳しくは本書に目を通してください。Q&A方式で45項目について分かりやすく丁寧に

解説されています。法律に疎い私でも簡単に読めるのでぜひご一読を!




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