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  • 執筆者の写真矢部 正治(元日本社会事業大学専門職大学院教員)

コロナ禍を理由に、コロナ禍の下で拡充すべき事業を削減


<21年度板橋区予算>

弱いところから削る板橋区の姿勢は疑問



 板橋区では、いま区議会で21年度予算の審議が行われています。

 この予算案で区はコロナ禍の税収等に「未曾有の経営危機」だとして、区の単独事業の団体補助金を一律に1割削減することを打ち出しています。


 補助金といっても実際は事業費


 団体補助金というと、町会連合会や老人クラブなどの団体の自主的活動への補助に思えますが、問題は「補助金」の名目であっても、区が各団体に依頼して実施されている多くの福祉事業がこれに含まれていることです。

 例えば社会福祉協議会で行っている成年後見人の利用を支援する「権利擁護センター運営費」や「アクティブシニア就労支援センター運営費」、「ぬくもりサービス事業費」などで、社会福祉協議会分は890万円も削っていますが、これらは事業の必要性を区が認めて、実施を社会福祉協議会にお願いしている委託費の性格を持つものです。


 また、障がい者の地域活動支援センターや相談支援事業、精神障害者ソーシャルハウス事業、障がい者の宿泊訓練事業なども区が必要性を認め事業ができるように助成しているものです。

 これらはいずれも小規模の事業で、事業費の大半は、人件費と家賃分であり、多少利用者が減っても事業費は減りません。

 来所する利用者が減った分、訪問や電話、郵便などで対応したためかえってコストが掛かっている場合もあります。




 削りやすいところから削る?


 しかも現場が困っているのは、削減の通知が、予算案発表後の2月以降、3月に入ってからというところが多いことです。

 一方、同じ「補助金」でも、23区で8番目に高い区議会議員への政務活動費約1億円は一銭も削っていません。

 これでは「削りやすいところから削る」姿勢にしか見えないことが残念です。


 相談拡充こそ求められます


 国は、コロナ禍において介護事業所や障がい者のサービス事業所の経営が悪化し倒産などしないように、介護報酬の工夫をして収入が確保できるようにしています。

 さらに生活困窮者や社会的な孤立に対応した相談支援の体制をつくるよう、「重層的支援体制整備」や「ひきこもり相談支援の強化」に取り組むよう、新年度予算でうたっています。

 社会福祉協議会の権利擁護センターもその強化に取り組むよう国が求めている事業です。


 ところが板橋区では例えば、「ひきこもり相談」の予算は2020年度がわずか92万円でしたが、2021年度はそれすら削って70万円としています。区議会で、「ひきこもり相談の件数は19年度17件、20年度10件」とまるで実情には程遠い数字が語られています。要するに「ひきこもり相談」をまともに受け止める体制がないのです。近接する豊島区や文京区では「ひきこもり相談支援センター」など相談支援の拡充が取り組まれています。

 板橋区では、ひきこもり相談の担当をコロナ対応に忙殺されている板橋保健所の予防対策課に、いまだにおいている事自体がおかしいと思います。


 昨年、板橋区がオープンした発達障がい者支援センターでは、開設と同時に相談が殺到、2ヶ月待ちという状況も聞きます。相談体制があれば待っている人はたくさんいるのです。

コロナ禍だからこそ、相談体制の拡充こそ大切です。

 板橋区のように相談事業を中心に一律削減を行っている区は寡聞にして知りません。なぜ、板橋区は逆方向に進んでいるように見えるのでしょうか?


 大山ハッピーロードを壊すタワマン計画に6.5億円、板橋駅西口再開発に1.9億円。こういう再開発はコロナ禍であっても着実に実施されています。また、板橋区には628億円の積立金もあります。「未曾有の経営危機」だと喧伝するには少しエビデンスが足りないように思いますが、いかがでしょう?



◆参考資料


令和3年度の予算

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