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  • 執筆者の写真Dee-Dee

板橋版コミュニティースクール(iCS)についての疑問

更新日:2021年4月12日

 私は板橋区の進めているiCSに疑問を感じている。その詳細を述べる前に、まずは日本でいうコミュニティ・スクールとは何かということを確認する。(図1)


図1 文部科学省のCSの図(旧)
図1 文部科学省のCSの図(旧)

 CS(コミュニティ・スクール)は文部科学省が推進している仕組みである。文科省のホームページを参照すると以下の通りに書かれている。

 
学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める法律に基づいた仕組みです。

また、主な役割としては以下の3つがある。

  • 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する

  • 学校運営について、教育委員会または校長に意見を述べることが出来る

  • 教員の任用に関して、教育委員会規則で定める事項について教育委員会に意見を述べることが出来る。

 学校の運営方針を承認するとは、承認しないことも出来るということだ。また、教員の任用について意見が言えるという組織も教育委員会以外には今までにはない。このような権限を地域がある程度持つことが出来るというのは画期的だと感じる。


 それでは板橋区でのコミュニティ・スクールはどのようなものかを図2を参照しながら確認する。図2は板橋区のコミュニティ・スクールであるiCSの図だ。私はこの図に問題を感じているのだが、具体的には2点だ。一点目はこの図にある「PTA」は本来「保護者」であるべきだということ。2点目は文科省の言うコミュニティ・スクールの役割が書かれていず、板橋区独自の役割が前面に書かれている点である。


図2 板橋のiCSの図(旧)
図2 板橋のiCSの図(旧)

 まず1点目について考える。文部科学省のCSの図1にはPTAの文字はないが、板橋区の図2ではPTAがコミュニティ・スクールと学校支援地域本部の窓口になっているように見える。板橋区の図では、コミュニティ・スクールに対して参画するにも、学校支援地域本部に関わる時にも、更には学校に対して支援をするときにもPTAを通すことが前提とされていることが図から読み取れる。PTAは任意設立の任意加入の団体なので、地域によっては存在しなかったり、組織としては存在していても入会していない保護者もいたりする。もしPTAに保護者が加入していない場合、この図のとおりだとすると学校に意見したり支援したりすることが出来なくなってしまう。これで良いのだろうか。


 また、この図の中には保護者という文字がない。板橋区の教育委員会はPTA=保護者と勘違いしているのだろうか。PTAはT(Teacher)が含まれているので保護者ではない。もしPTAをこの図の中に入れるのであれば、おやじの会と同様、地域人材のところに入るべきだろう。


 次に2点目について考える。板橋区のiCSの役割は、この図を見ると3つある。

  • 学校のビジョン策定 

  • 学校の課題解決 

  • 学校支援

 文科省の図と同じく3つあるが、内容は異なっている。一つ目の学校ビジョンの策定を除くと、学校が困っていることに対して支援する役割という印象を受ける(一つ目のビジョンは、学校が作るべきではないかと思うのは私だけだろうか。)学校の運営方針を承認したり、教員の任用に意見できたりするという文科省のコミュニティ・スクールの役割と比べるとずいぶん意味合いが違うように感じる。そもそも文部科学省のCSの役割のうち2つは教育委員会に意見するということだが、板橋区のiCSの図には教育委員会がない。3つの主な役割のうち2つが欠けていることになる。


 板橋区のiCSは文科省の推奨しているCSとは別のものなら理解できるのだが、その場合は別のものだと明記しないと誤解を招くだろうし、もし同じものなら役割は同じであるべきだと思う。「熟議」や「両輪」など板橋区独自のカラーを出すことは良いと思うが、そこはあくまで付随的なものであり、基本をしっかり押さえてもらいたいと強く思う。


 さて、文科省の図1、板橋区の図2を参照して考えてきたが、これらは実は最新の図ではない。そこで、最新の図を見て何が変化したのかも見ていきたい。


 図3は最近の文科省のCSの図だ。以前のものとほぼ同じだが、中央左の部分の、コミュニティ・スクールから教育委員会に対して、教員の任用に関する意見のところに「柔軟な運用を可能とする仕組みへ」という吹き出しが入っている。教員不足や教員の不祥事などに対応するために入った言葉だろうか。


図3 文部科学省のCSの図(新)
図3 文部科学省のCSの図(新)

 対して板橋区のiCSの図4は大きく変化している。コミュニティ・スクールの役割には「何を埋めるか」「何を正すか」「何を創るか」などの言葉が入って具体的な感じにはなっている。しかしここにはやはり教育委員会という組織名はなく、PTAが入っている。板橋のiCSには教育委員会に意見する機能はないのだろうか…。ここに書かれていない役割はよほど興味を持って調べない限りこのとおりの組織だと思う。委員自体が自組織の役割を知らなければ、役割を果たすことなど出来ない。教育委員会に意見などしてほしくないからあえて説明しないという方針なのだろうか。


図4 板橋区のiCSの図(新)
図4 板橋区のiCSの図(新)

 最後に。地域コミュニティの希薄化が問題だと言われて久しいが、生産年齢人口の割合が減り、共働き家庭が増えている現在、地域コミュニティに積極的に参加できる人材にも限りがある。学校周辺にはここ10年で様々な団体が出来たが、担い手は同じ人で、会議名や団体名が変わるだけで集まるメンバーはほぼ同じだと聞く。同じような話を同じようなメンバーで、でも会議名や団体名が違う場で話し合う。参加する人はどのように感じているのだろうか。学校地域本部で学校の支援をしているが、PTAでも支援をしている。支援する団体はいったいどこなのか。複数ある場合はどのように住み分けるのか。効率的な組織を作るためには、役割はもれなくダブりなく行いたいものだ。学校周辺に組織が増えれば、地域活動に関わる人の負担も大きくなりこれ以上はできないということにもなりかねない。

地域で学校を支えるという考え方には反対はしないが、自治体の仕事が増えて人材が不足しているのと同様に、地域活動を担える人も減っていて人材は不足している。うまくいかないから次々に新しい組織を作るのではなく、まずは学校回りの団体の目的や関係性を整理するところから始めてほしいと思う。


#コミュニティ・スクール

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