top of page
  • 執筆者の写真紫垣 伸也(赤塚新町在住)

板橋区民は板橋区政や区議会をどれだけ知っているか

更新日:2021年2月6日


議員報酬とは別に自治体議員の調査・研究活動のために支給される政務活動費。23区でもその額は異なり、板橋区議会議員には月額18万円を上限として支給されています。その使い道を区民がチェックすることも民主主義の実践。この件について板橋区の情報公開はどの程度進んでいるのでしょうか(TEAMくらデモ編集部)。

 

 「平日は朝から夕方まで(時には晩まで)仕事や学校などがあり、日々の生活をこなすのに精いっぱいで板橋区政や区議会に関心を持つ余裕なんかない。ましてや区政や区議会をチェックして改善点を見つけて物申す、なんてできるはずがない。時には週末や祝日だって仕事や家事などに追われているのに」

 という区民は結構いるのではないだろうか。

 板橋区における区民の代表は、選挙によって選ばれた議員であり、その議員が活動し区の意思を決定する機関が区議会である。つまり、区議会の動きを知ることは区民にとって重要なことであるのと同時に、区民は区議会の動きを知る権利があるといえる。

 別の視点でいうと、例えば板橋区議会の予算(議会費)は年間約9億2800万円(令和2年度)。これらは区民の税金で成り立っているはず。つまり区民は、実感している・していないに関わらず区議会に出資をしているのである。そういう意味においても区民は区政の、区議会の出資者として区政や区議会をチェックし、より区民のための区政、区議会の実現を訴える権利があるといえる。


 しかしながら、その権利を行使することはそう簡単ではない。なぜなら冒頭に述べたように、区民は忙しいからである。多くの区民は日々の生活で精いっぱいで実践する暇や余裕などないのである。

 “そう簡単ではない“ と述べたが、実際のところは、簡単ではないどころか、場合によっては難しい、もしくは不可能、と言っても過言ではない。なぜなら、区民は区政のことを区議会のことをよく知らないからである。

 「いやいや、別に隠しているわけではないよ。あれこれやってそれなりに時間を割いて、労力とカネを費やしたら知ることはできるよ。それをしないあんた(区民)のせいだよ!頑張って知ろうとしないあんた(区民)の問題だよ!」と主張する人はいるかもしれない。それはそれで正論かもしれない。「そのとおりだ!」と納得する区民がいてもそれも良いだろう。個人個人の意見は尊重したほうが良い。

 しかし、「いやいやいやいや、そこまで自分の生活を犠牲にしてまでしないと知ることができないなんておかしいんじゃないの?第一区民は、区政の区議会の出資者(納税者)なんだし」と思う区民はどうすればよいか。そのような区民が持つ権利、区民のニーズに対応するために区政や区議会の区民への情報公開の促進、区民が容易に情報を得られるような仕組み、区民が容易に区政に参加できるような仕組みつくりを促進していくことが必要であると考える。

 区民がもっと区政に参加できる仕組みや情報公開の促進を考える例は実はいくつもあるが、そのなかから一例をあげたい。

 例えば、議員の政務活動費についてご存じだろうか。政務活動費とは、地方議員の調査・研究活動のために、議員報酬とは別に支給されるもので、板橋区議会議員には月額18万円を上限として支給される。板橋区の政務活動費の年間予算は9936万円(令和2年度)。ちなみに政務活動費の金額は自治体が独自に決められるようで同じ23区であっても例えば荒川区議会議員の政務活動費は月額8万円である。

 近年、議員報酬とは別物である政務活動費は、市民(区民)がその内容の詳細を明確にかつ容易に知ることができるように各自治体ホームページでの公開が進められている。例えば世田谷区では政務活動費の ①収支報告書、②会計帳簿、③領収書 を公開している。目黒区は ①収支報告書と②会計帳簿を公開している。②の会計帳簿まで公開していると各議員が具体的に何に政務活動費を用いたかがよくわかる。区民は区政を区議会の一部を議員の政務活動費を通して知ることができる。


 一方、板橋区議会は現時点で①収支報告書のみ公開している。①収支報告書だけだと具体的に何に政務活動費を用いたかがわからない。

 そこで筆者は2014年9月にこの政務活動費の①だけでなく②、③も区のホームページで公開することを求める陳情を区議会に提出した。しかしながら数回の継続審議のあと、改選(新たに区議会議員選挙が行われること)にともない、陳情が廃案にされ、審議が終わってしまった。なので、改選後の2015年9月、再度同様の陳情を区議会に提出したのだが、それはなんと不採択とされてしまった。不採択通知に書かれてあったのは「趣旨に添いがたい」のみで不採択の理由の詳細は不明である。


 板橋区議会でいえば例えばこの政務活動費について他の自治体のように②や③を公開するなどしてもっと区民が知ることができるような改善をする余地があるのではないだろうか。板橋区議会においても今後②会計帳簿も区ホームページで公開する話が進んでいるときいた。本当ならば早期実現を期待したい。


 「ホームページで公開されていないならば、区に情報公開請求すればよい」という意見もあるかもしれないが、筆者も一度政務活動費の情報公開請求をしたことがあるがはっきり言って容易ではない。請求が認められ開示されても閲覧できるのは基本的に請求者のみであり、ホームページに公開された情報のように幅広く情報を共有することは困難である。

 このように政務活動費一つとっても実は区民は知らない、知らされていない(少なくとも容易には知ることができない)状況にあるということがわかる。今の区政の何が良いか何が悪いか、何をどのように改善するべきか、を考え、訴えていくためにはまずはより多くの区民が、忙しくてもいろんな困難な事情があったとしても区政や区議会について知ることができる環境をより多く作ることだと考える。ある特定の区民、議員とかだけが情報を得る社会ではなく、どんな区民であっても容易に区政や区議会の情報が得られる仕組みづくりが必要ではないだろうか。ICT(情報通信技術)というのはそういうことに活かされるべきではないだろうか。

 そしてそれが板橋区に民主主義を根付かせる第一歩ではないだろうか。




◆参考資料

1) 板橋区予算(令和2年度) 議会費

PDFの144ページ

PDFの147ページ

2) 板橋区議会議員の政務活動費月額18万円と公開中の収支報告書について


3) 荒川区議会議員の政務活動費月額8万円について


4) 世田谷区議会 政務活動費 ①収支報告書、②会計帳簿、③領収書の公開について


5) 目黒区議会 政務活動費 ①収支報告書、②会計帳簿の公開について




閲覧数:340回0件のコメント
bottom of page