誰のための再開発―大山町クロスポイント
更新日:2021年2月25日
目的はまちのにぎわいではなく、マンション建設のためだった
大山駅周辺地区まちづくりのメインプロジェクトでもあるクロスポイント再開発。2019年6月に再開発組合が設立されて以来、進捗の情報を全く公開しなかった再開発組合が、2020年6月23日に突如権利変換の告示を行なった。そして8月から建物解体工事に着手するべく、再開発組合は7月21日に説明会を開催した。
この再開発は都道補助26号線の開通とあいまって、古くからの商店街の町並みやにぎわいを破壊し、結局のところ高層マンション建設のためだったのではないか。大山問題の最前線をリポートする。
再開発計画を区民に隠すような対応
クロスポイント再開発組合は、2019年6月7日に組合が設立された。その際にニュースリリースとして計画概要を記したパンフを配布した。
しかし、その後はウェブサイトなどを通じた情報発信は全くせず、権利関係者以外の大山のまちづくりに関心を持つ人たちへの情報提供はほとんどなかった。
再開発組合は、2020年6月23日に権利変換(*)の告示を法律の手続きにのっとって行った。告示は法律で定められた通り、2週間後の7月7日に撤去された。権利者以外には何の連絡もなく、告示を見損なった大山のまちづくりの関係者も多い。
*権利変換とは:
権利者の所有する土地や建物などの資産(従前資産)を、新しい再開発ビルの敷地と床(従後資産)に置き換えること。このとき従前資産と従後資産の価格は、等価交換が原則。
何よりも告示の方法が不親切だった。告示の細かいところは肉眼ではおよそ解読できない大きさでの掲示であった。この点について区役所拠点整備課に問い合わせると、「組合の告示だから内容も知らない。個人情報だから見にくいのは構わない」との返答であった。

そこで、再開発組合に内容を尋ねると「10日間掲示したので、対象の権利関係者以外には見せない」とのことだった。法律で決められた期間は14日であり、再開発組合の発言には事実の誤認がある。
さらに東京都市街地整備部再開発課に尋ねたところ、告示期間内なら再開発組合の方で第三者にも見せたはずだが、期間後の閲覧は不可だという。だが、このようなことは区も再開発組合も一切言わなかった。
個人の財産を知りたい訳ではない。大山のにぎわいや商店街の発展のために権利変換がどのように行なわれるのか、具体的には、再開発後のビルに入る店舗数や店舗の面積が知りたいだけなのだが、個人情報を盾に区も再開発組合も前向きに応じてくれなかった。板橋区が標榜している「区民協働」のまちづくりとは程遠いのではないだろうか。
多くの既存店舗が消滅する
再開発で解体される既存の商店のうち何店舗が新しいビルに入居できるのか。区や再開発組合が情報開示に応じない以上、不親切な告示からこちら側が読み取る以外に今のところは数えようがない。詳細な部分では異なる点が出てくるかもしれないが、告示を読んだ範囲で解読するなかで、何軒が消滅するのかおおよその姿がわかってきた。

解体計画の図面をみると、再開発による解体建築物は4区域で31棟ある。それに加えて補助26号線で撤去される建物が他大型店含めて数棟ある。実際に取壊される区域に既存店舗が何軒あるのか。商店街のマップと現地取材から自主的に調査した。
南側のD区域で13店舗、北側A区域20店舗(階上の飲食店を含む)、合計33店舗は撤去される。告示前に閉店をした店舗も少なくないことにも注意したい。70年の長きに渡り地域に愛されたお店なども惜しまれつつ廃業をやむなくされた。

再開発ビルにハッピーロード商店街の既存店舗はどのくらい入るのか。これについても、2020年6月23日に権利変換の告示撮影した画像から解読する。
店舗については、4棟の再開発ビルの1、2階に移ることなる。撤去される33店舗に対して、半分にも満たない15店舗分のスペースしかない。新たに小池都知事肝煎の保育園や集会施設が開設されることになっている。
再開発組合が所有するスペースもあり、それについて店舗として貸し出すのかもしれないが、判明した限りでは既存の店舗で再開発ビルに入居するのは僅か8軒しか見当たらない。この辺りの数字の詳細は、区や再開発組合による情報公開がなされていないために、必ずしも正確ではなく、おおよその傾向としてつかんでもらいたい。再開発を機に店舗の賃貸借料が値上げされることも店舗の継続にとっては不利な条件となるだろう。
再開発ビル建設のために、ハッピーロード商店街の中心部の多くのお店がなくなり工事用の壁で囲まれることも、まちの景観という点では問題だ。しかも工期は4年間である。現時点で再開発ビルに入居予定の店舗も4年後の経営に不安を抱えている人もいる。権利変換で店舗を所有し得ても自らは経営せずに、貸店舗事業に切り替える人も出てくるだろう。先に述べたように再開発を見越して経営を断念した店舗もある。結局のところ既存店舗の半数以上が消滅する。やはり商店街の活性化のための再開発とは言えないのではないか。再開発を契機に商店街の発展を目指すというのが区の立場ではなかったのか。改めて区の説明責任が問われる。


