大山駅周辺で進行中の再開発は、町の景観や人と車の流れをどのように変えていくでしょうか。大山に住む住民の一人として、地元をより安全で暮らしやすい場所にしたいと願ってきました。そして、2年前から再開発計画に大きな関心を持ち、板橋区に対して何度も質問をし意見も述べてきました。けれども、担当者からまともな回答は返って来ません。
都市計画法第16条(公聴会の開催等)には、
「住民等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」
と書いてあるのに(下図)。
大山町ピッコロ・スクエア周辺地区第1種市街地再開発事業は、令和4年 (2022) 1月11日に最終的な都市計画案の縦覧・意見書の公募が始まり、2週間後の1月25日が締切日でした。形式的には都市計画法の手続きを踏まえていますが、心の中のモヤモヤが消えません。そして、この3月には当初の計画案通りの都市計画決定が成立するでしょう。
なぜモヤモヤしているかと言うと、大山で再開発が先行するクロスポイント周辺地区(下図)には、いくつもの大事な情報が隠蔽されているからです。区が公表できない情報って、よほど知られたらマズイ内容なのでしょうね。ピッコロ・スクエアもクロスポイントと同じように、多くの秘密が存在しています。2つの「初めにタワマンありきの再開発計画」は本当に謎だらけです。そこで、特に気になった2点を記録に残しておきたいと思います。
1. 板橋区都市計画審議会について
1. 板橋区だけ官公庁委員が多いのは何のため?
板橋区都市計画審議会は、関係行政機関の委員が24名中5名(22%)を占めています(下図)。近隣の練馬区・北区・豊島区は、地元警察署長と消防署長の2名だけが行政機関代表なのに、なぜ板橋区だけ人数を増やしたのでしょう。円グラフの山吹色部分を比較すると板橋区ののボリュームの多さがはっきりわかります。
一方、練馬区は住民(円グラフ黒色部分)の中に4名の公募区民だけでなく、環境団体代表と身障者団体代表の2名が含まれ、全体の48%を占めています。残念なことに板橋区には公募区民は入っていません。委員の選考基準は自治体によって大きく違うものなのですね。どのように決めているのか知りたくありませんか?
2. 委員の職業や出身団体を隠す必要はありますか?
そして、他区であれば最初から配布資料に委員の肩書きや出身団体名が掲載されているのに、板橋区では情報公開請求(右図)しないとチェックできません。公開に前向きでなかった委員がいるのでしょうか。審議会の信頼性を高めるために、最初から開示して欲しかったです。
3. 審議会の会長は誰の味方なんですか?
本来、公平に審議を取り仕切るべき会長の中立性に、大きな疑問を感じる出来事がありました。過去の会議録をもとに2つの例を紹介します。
事例その1) 令和元年 (2019) 9月12日に第182回審議会が開かれました。「駅前広場(下図)等の計画」審議になんと1,600通を超える反対意見が集まり、継続審査の動議が8対8で可否同数になりました。しかし、会長は東京都都市計画審議会の開催までに結果を出したいのか、自ら反対票を投じて議論を封じる行動に出たのです。そして、計画はあっさり採決されてしまいました。
事例その2)
令和3年(2021)11月1日の都市計画審議会開催時にも、会長は委員からピッコロ・スクエア関連の報告を受けた際、事業を推進する立場に立って執行部を応援するアドバイスをしました。会長は再開発に肯定的な論文を多数発表し、物流会社の経営者など実業家としての経歴もある人物です。
会長の中立性は一体どこへ行ってしまったのでしょう。┐(´ー`)┌ヤレヤレ
Ⅱ 再開発の手続き上の問題点について
1. 住民との対話がない "まちづくり"
令和3年 (2021) 3月15日に開催された「市街地再開発準備組合」主催の説明会は、限られた関係者のみで実施されました。主催者側が地権者と認める人たちには招待状が届きましたが、招待状のない人たちは入場を許されませんでした。当日は、高さ107メートルの30階建て及び29階建てのタワーマンションのイメージ図(下図)が提示されました。
令和3年 (2021) 7月17日及び19日に予定されていた素案説明会は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、会場開催が動画配信に切り替わりモニター越しのやり取りとなりました。参加者からの質問や意見は ピッコロ・スクエア周辺地区 素案「都市計画素案に関する主な意見等」(下図)に掲載されました。とは言っても、以下の通り質問が並んでいるだけで、通常は記載される区側の回答が載っていません。聞くだけで終わりなんて切ないです。
2. 理論破綻を隠したい支離滅裂な板橋区
私たちは令和3年 (2021) 9月16日および19日に開催された原案説明会に参加しました。とある質問に対する板橋区の説明が理論的に破綻していたため、会場から失笑が洩れる場面がありました。これは、回答を誤魔化すことに失敗したってことになりますよ。当日は細かく質疑内容をメモっていたので、後日WebサイトにアップロードされたPDF(下図)と付き合わせて照合したところ、またしても区の回答が付いてないことに気づきました。そこで、情報公開請求によって入手した開催記録(内部資料)から、2つの質問(AとB)に対する回答を書き出してみます。
A. 大山のまちづくり全体に関すること
(質問)商店街分断後の "にぎわいの創出" について、数字の根拠は?
(回答)「集客力や賑わいは今後の検討課題であると考える」
庁内でも全く調整していないようです。このままでは "にぎわい" は絵に描いた餅になります。
B. 再開発の事業計画に関すること
(質問) 建築物の高さ制限を107mにした理由は?
(回答) 高度利用地区では、壁面後退、広場等の確保により、容積率の割増を受ける制度となっており、その結果として107mという高さの限度が設定されている。
(質問) 事業性とはどういう意味か?
(回答) 「事業に要する支出と収入のバランスが取れて事業が成立することをいう。支出には、道路・公園等のインフラ整備や建物整備に係る工事費、補償費などがあり、収入には、保留床処分金や補助金がある。」
おかしいなあ。当初、区は事業費(支出)は不明と答えていたんですよ。それなのに採算がわかるんだ。
3. 隅に追いやられる反対意見
令和3年 (2021) 11月1日の都市計画審議会には、原案に対する縦覧結果と意見書が提出されました。反対意見の多くは、「本都市計画原案に関しない参考意見」のカテゴリ(右図赤枠)に追いやられました。
大久保まちづくり調整課長の説明も「本都市計画に関しない参考意見は(3)のとおり、総数15件の意見がありました」と軽〜く触れただけで逃げました。再開発に賛否があるのは当然なので、反対意見にしっかり向き合って欲しいのですが...。
実は、区の再開発計画自体にはひと言もタワマンに触れていません。反対意見の多くはタワマンありきの再開発計画に異議を唱えているため、タワマン反対を中心に意見を書くなら、本都市計画に関しない意見に分類しますよ、ということなんでしょうね。
すべての意見を俯瞰できるよう、7枚の画像(下図)にまとめてみました。15件の「本都市計画原案に関しない参考意見」には赤線を引いたので、そのページ数の多さを実感してください。真っ当な扱いを受けた意見4.5ページに対して、 タワマンに言及したため隅に追いやられた意見は7.5ページもありました。
Ⅲ まとめ
大山町ピッコロ・スクエア周辺地区の都市計画の決定は、一見するとルールに従って形式的な手続き(下図)を経ているように見えます。
ところがどっこい住民の意見や要望は計画案には1ミリも反映されません。都市計画決定までの手続きは、区の計画案を追認するためだけのセレモニーです。
ほんの少しでもいいから、区の「傾聴力」を感じたかったです。こんな無謀なプロセスを経て決定される大山駅周辺の再開発が心配です。
<参考資料>
大山駅周辺地区のまちづくり
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