4日連続で投稿した4つの話は、読んでいただけたでしょうか?
第1回 「教育の板橋」の本当のところ
第2回 板橋区教育委員会が目指すもの
今日も板橋区の教育施策にまつわる質問に答えていきます。
板橋区の「GIGAスクール構想」は順調に進んでいますか?
学校にタブレット型端末が届いて以来、先生方は活用方法を話し合っています。文科省が出したGIGAスクール構想の実現をもとに板橋区教育支援センターが作成した資料によると、児童生徒1人に1台の端末を用意し、インターネットを活用して学習を進めるという計画です。
GIGAスクールの準備は令和5年度末までに終了する予定だったのですが、新型コロナウィルスの影響で3年も早まり、本年度からの実施が決まりました。コロナで大変な状況も加わりましたが、ひどく急いでいる感じです。本当は3年かけて検討し導入する計画だったのに、現場でうまく活用できるのだろうかとたいへん危惧しています。
GIGAスクールの導入によって、教える教員が戸惑うのは必至です。今やっと電子黒板や電子機器を使用して、子どもたちと対面しながら授業をしている状況で、それが少しづつ定着しつつあります。でも、電子黒板をあまり使わずに授業をする先生ももちろんいます。その状況でタブレットが入ってくるのです。教員のいままでの教授方法、教材の考え方を大事にしたいのです。タブレットが入ってきたから、タブレットを使わなければ、としてはいけないと思います。タブレットのもつ可能性についても丁寧な研修が必要です。授業のサポートも不可欠なのですが、今の体制はICT支援員1人が学校に来ているだけで、日常的に発生する機械トラブルには即座に対応できず、授業でストレスなく活用するにはまだ時間がかかりそうです。
2021年2月16日にICT推進指針が出されたのですが、校内ネットワークが低速なのに高速に変えるとか、驚いたのは教育支援センターが未だに低速だった回線を今頃高速化をしていることです。タブレットの整備は、正規教員が1人1台。2台ずつ予備機を入れ、区全部で35,452台のタブレットを入れる計画です。
各家庭におけるインターネット環境を整備していく方針ですが、すべての家庭でオンライン授業ができるのか不安があります。また、オンライン授業が次世代の板橋区立学校の不登校対策にもなるとも言われますが、タブレットにどれだけの効果があるのか疑問です。なにより学習の中身が子どもたちが興味を持てるものになりうるのかが大事だと思います。子どもたちにとって学校とつながらずにいる心理的な不安は当然あるので、タブレットを使ってつながっていこうとする努力は必要かと思いますが、はたして不登校対策と言い切れる内容なのか疑問が残ります。
「プログラミング教育の充実」も新しい教育課題となっています。これもどれだけいい中身になるかが大きな問題で、家庭で授業の予習・復習に使われるだけでは今言われている個別最適化学習には結びつかないでしょう。ひとりひとりの進度にあった課題が提示されて基礎基本の定着につながり、タブレットを通じて送られてくるドリルみたいなものを自分でやると、丸付けやどこでつまづいているかを教えてくれて楽に学習ができるのではないかとも言われています。はたしてそういうものかと疑ってしまいます。
学校内では、今までプリントで配っていたものが全部タブレットを通してやるので、地球環境にやさしくてSDGsにつながるとも言っています。これも矮小化しているように思います。プリント教材には、プリント教材の良さがあるのです。なんでもかんでもデジタルにして良いというものでもないはずです。
画面を大きく拡大したり音声で読み上げる機能は、発達障害や知的障害児への個別対応につながるので、良いといわれています。ディクレシアは、知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害です。行ごとに色がついて、そうした子どもたちにも対応できると言われています。
データ活用による授業準備の効率化は、働き方改革につながるとも説明されていますが、いろいろ蓄積したものをデータ化して使うということはあっても、授業の進め方の準備は必要になり、必ずしも効率化につながらないと思われます。
また、導入アプリはベネッセのものを使うようですが、大きな問題になりそうなのはタブレットの重さです。1.3kgくらいあり、これを毎回持って帰ってまた学校に持ってくるとすると、教科書もあるしどうするのか、少し考えなければいけないだろうと思います。またベネッセ1社に全部丸投げで良いのかも問われなければならないでしょう。
高野 毅 先生のプロフィール
定年退職後も引き続き非常勤講師として板橋区の小学校で教える。教師の働き方改革や教員の職場での仲間づくりもライフワークで、教職員組合運動を大切にし、そこでも活躍をしている。「志村小がなくなる?小中一貫校問題を考える会」のメンバー。
Comments