2020年5月8日18時すぎに板橋区学校等緊急メールが届いた。 件名は「【緊急連絡】家庭のネットワーク環境調査について(重要)」だった。
短いので本文を以下に掲載しておきたい。
板橋区立学校に通学されている児童・生徒の保護者の皆様にお願いがあり連絡をさせていただております。
東京都の要請を受け、令和2年5月31日まで板橋区立学校の休校の延長をお知らせさせていただいたところです。本区教育委員会といたしましては、長引く休校における学習の保証が大きな課題となっており、オンラインにおける双方向授業等も検討を始めているところです
そこで、現在の家庭におけるインターネットを活用した学習状況を確認するため、板橋区教育委員会からの動画配信の閲覧状況や、ご家庭におけるインターネット環境について、アンケートを実施させていただきます。以下のURLより、5月11日(月)午後9時までに、お答えいただけると幸いです。今後のオンライン授業の実施に関する重要なアンケートと考えております。よろしく回答願います。
以上の文面の下にURLが貼り付けてあり、「家庭のネットワーク環境に関する調査」に飛ぶようになっている。そこには小学生、中学生の保護者向けフォーマットがあり、保護者は回答を求められる。 拍子抜けしたのは、調査項目があまりにもシンプルということだ。質問は2つ。 1、板橋区教育委員会から発信している動画をご覧になりましたか。
2、ご自宅でYouTubeなどオンラインで動画を見れる環境はありますか。
回答は、「はい」か「いいえ」の2択である。 2の設問は見事に「ら」抜き言葉。公的なアンケートならば「見られる環境」とした方がいいのではないか。 学校名・学年組・出席番号、子どもの名前を記入するのが必須になっている。個人情報なので取り扱い注意にするとの文言があると、記入する側の心理的障壁はなくなるのになあと思った。
区内の小学校・中学校が一斉休校になってから、担任の教員が各家庭に週に1度くらいの頻度で電話をかけてくれている。「元気にやっていますか? 生活リズムは崩れていない? 宿題やっていますか? 家でどう過ごしていますか?」 電話での短い会話だが子どももうれしそうだ。保護者としても担任とつながっている安心感がある。上記2問のアンケートであれば、教師が電話で確認すれば済む話だと思う。オンライン授業を受ける環境にあるかのアンケートをあえてオンラインでやるという小さな(実験的な)試みであるならば、アンケートの実施は各学校単位の方がいいのではないかと思う。
そもそも、板橋区教育委員会ではオンライン授業の検討をしているとあるが、その準備がどの程度まで進んでいるのだろうか。実際にいつから開始を考えているのだろうか。おおよそでいいので教えてほしい。今回は「緊急連絡」ということなので、準備は大詰めを迎えているのだろうか。 大学では小学校や中学校よりも一足先にオンライン授業が始まった。オンライン授業に対する戸惑いや問題点はネット上で広く共有されている。
「ご自宅でYouTubeなどオンラインで動画を見れる環境はありますか」という設問に戻ろう。 youtube動画をパソコンの画面で見るか、スマホで見るかによっても疲労度や授業への集中度が変わってくる。家庭に何台パソコンがあるかも大事だ。親の仕事やきょうだいの勉強と重なっていると自由に使えない。
だから聞くべきは、子どもが自由にyoutube動画を見て学べる環境があるかどうかであるはずだ。教材を印刷できるプリンターはあるのか。そういうところまで聞かないと、オンライン授業の実施に向けたアンケートとしては不十分だろう。
この間、色々な大学でオンライン授業に関するアンケートは実施されて来たのであり、それらを参考にするという発想はなかったのだろうか。他の自治体の取り組みとの比較検討はされているのだろうか。
オンライン授業を受けるデジタル端末がない家庭に対しては板橋区教育委員会はどういう対応をするのだろうか。その対応を決めずにアンケートだけをとるというのは、オンライン授業を受ける環境のない家庭を見殺しにするのに等しい。パソコンやwifiルーターは貸し出してくれるのだろうか。有償なのか。無償なのか。そういうあたりの腹づもりも板橋区の教育支援センターに聞きたい。
子どもは次の社会を形成する大事な「次のおとな」だ。板橋の未来を切り拓く子どものためにも板橋区はあらゆる手立てを使って教育権を保障してほしい。「あたたかい人づくり」を標榜して当選した坂本たけし区長の姿勢が問われている。
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