今年は2025年度から板橋の中学生が使う教科書の採択年
公立小・中学校で使用する教科書は、所管の教育委員会において採択することが法律により定められており、原則4年ごとに行われます。
板橋区教育委員会は「東京都板橋区立学校教科用図書採択事務規則」及び「東京都板橋区立学校教科用図書採択事務実施要領」に基づき、種目ごとの調査研究報告、学校意見及び教科書展示会で出された区民意見を参考に、協議のうえ、採択します。
教科書採択を議題とする教育委員会は8月に開催
第1回は2024年8月1日(木)午後1時から、板橋区役所南館6階教育支援センターで開催。
第2回は2024年8月22日(木)午後1時から、板橋区役所北館11階 第一委員会室で開催予定です。
8月1日の教育委員会では7科目の審議が行われ、以下の発行者に仮決定されました(括弧内は現行教科書)。
国語(国語)…三省堂(三省堂)
国語(書写)…三省堂(三省堂)
社会(地理)…教出(教出)
社会(地図)…帝国(帝国)
社会(歴史)…教出(教出)
社会(公民)…日文(日文)
数学……………東書(東書)
心配された社会科歴史・公民ですが、令和書籍・育鵬社・自由社といった、教科書検定は通っているものの、その内容に大きな問題のある会社の教科書については、5人の委員から名前もあがることなく採択されませんでした。
教育長の交代がありましたが、審議方法は踏襲されました。まず、教育委員が一人ずつ自分の評価基準や見解を具体的に延べます。一巡後、教育長が引き取って自分の意見を加え、多数意見をもとに合意で仮決定するという進行でした。
私たちは教育委員会に対する請願で、現場教職員による「学校調査票」と教科書閲覧会での「区民アンケート」を重視するよう訴えています。たしかに、板橋区の教育委員会のウェブサイトには「学校意見及び教科書展示会で出された区民意見を参考に、協議のうえ、採択」とあります。しかしながら、委員の口からは「参考にした」との発言こそありましたが、具体的な意見紹介がなかったのはちょっと残念でした。仲間を誘い合って、一生懸命書いたのになぁ……(笑)。
何を基準に選んでる? 見栄え重視で選んでいる?
教育長はじめすべての教育委員が教科書を選ぶ「基準にした」のが、「板橋区の授業スタンダード」や「SDGs」、文科相が推奨している「個別最適化」「主体的・対話的で深い学び」でした。また、教科書に掲載されているQRコードに数や写真・イラストなどの見栄えにも議論が及びました。
板橋区に限らずですが、「授業スタンダード」があることで、意欲的な教師が創意工夫して授業がつくれない弊害も指摘されています。若手教員にも使いやすいような、ある意味では「誘導」型の授業展開になっている教科書を選びたい気持ちもわかりますが、教科書を開いた時点で、授業の「落ち」がわかってしまう教科書は、子どもにとって(教師にとっても)退屈な教材ではないでしょうか。
区民が教育委員会を傍聴するのは、教育委員の喧喧諤諤の審議を期待するからです。「教育とは何か」「教科書とは何か」の本質を重視し、教材そのものの教育性、真実性、科学性に審議が及ぶと、教育委員同士も学び合えますし、傍聴している区民もその審議から教育観、学校観を豊かにすることができます。
8月22日の審議は以下の9科目の予定です。
理科・音楽(一般)・音楽(器楽)・美術・保健体育・技術・家庭・英語・道徳
2006年に教育基本法が改正されて、教育の質を国家が管理するような教育システムになっている現在、国家が子どもに特定の生き方を誘導するような特別の教科である道徳とその教科書は要注目です。
教育は次世代を形成する大事な営み。板橋の子どもがどの教科書で学ぶのか、このことを気にかけることは「市民」として大事なことだと思っています。
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