2月12日、板橋区グリーンカレッジホールで、「『教育のいたばし』を問い直す」と題するシンポジウムが開かれた。主催の志村小がなくなる?小中一貫校問題を考える会は、板橋区教育委員会が推し進める、志村小を廃止し、志村四中と統廃合しようとする小中一貫校計画の無謀さを明らかにし、建設見直しを求めてきた。小中一貫校問題への取り組みから見えてきたのは、公共性を失い、暴走する教育委員会の姿勢であった。いま、教育行政への住民参加が問われている。参加者は50名を超えた。住民の関心の高さがうかがわれた。
最初に挨拶にたった代表の須藤敏昭さん(大東文化大学名誉教授)は、教育研究者として、学校は行政の都合でなく子どもに合わせてつくることが大切であること、小学校は特に大規模校ではなく子ども一人ひとりに目の届く小さなサイズが自然で必要であることを訴えた。また、板橋の教育委員会について、20年前に協力した体験から当時と比べ、今は変質して暴走しているとの印象を語った。
基調報告を担当した和田悠さん(立教大学文学部教授)は、ご自身のお子さん2人が志村小卒業生。2020年10月、当時小学校4年生だった二男がクラスで自主的に行なったアンケートを紹介。子どもなりに小中一貫校の計画を理解した上で、それに反対の子どもがかなり多く、学校で思い切って遊びたい、のびのびしたいとの思いを持っていることがわかる。板橋区教育委員会は、子どもの声を初めからちゃんと聞いてきたのかと問いかけた。
また、教育委員会が暴走しているのは、議会が十分に教育行政をチェックできていないからだ。二元代表制である地方議会においては、与党・野党関係なしに、多様な住民の声を受け止めて、オール議会で教育行政を監視・監督しなくてはいけないはずなのに、現状はそうなっていないと指摘。志村小問題は、議会制民主主義の危機でもあるとした。
さらに、教育委員会が志村小学校の関係者を構成員とした「魅力ある学校づくり協議会(志村小)」を設置する以前から、小中一貫校を志村地域に建設する意思を持っていた。協議会を利用して、あたかも地元住民が小中一貫校を望んだかのようなシナリオを教育委員会が描いたことは、地域住民を騙すもので、不誠実。許されないと述べた。
「もうあきらめるしかないのか。小中一貫型学校の建設に私たちが反対しているのは、あまりにも劣悪な教育環境の学校ができるから。公共性という観点からあってはならない学校だからだ。見直そうという住民の立場こそ「現実的」である。志村小問題は氷山の一角。板橋の教育のあり方、行政のあり方が問われている」と結んだ。
次に地域住民であり、地元の保護者のかたが登壇。自宅から見える志村四中の動画も紹介しながら、8年前に日当たりの良さに一目ぼれして志村四中隣に新築一軒家購入し、お子さんが志村小での野球チームに参加していたところに寝耳に水の本計画を知り、愕然となった体験と、これまで近隣住民と協力し合って住民を無視した区の無謀な計画に抗議を続けてきた経過を話した。
学校の図書ボランティアの経験から、「子どもは思いがけないほどの可能性を持っている。子どもの無限の可能性を大切にする教育環境を用意するのが大人の責任ではないのか」との発言は、参加者の共感を呼んだ。 3番目に登壇したのは、板橋区の小学校に勤務する現職教員。かつての板橋区は教育現場ののびやかさや自由で有名だった。だが、近年は区教委の決めた「板橋区授業スタンダード」が現場に上から押し付けられ、画一的な授業を強いられている。授業を創意工夫して作ることが許されず、教師にとっても「させられる教育」になっている。教師の仕事の魅力が失われ、結果として教師希望者も減っている。今の板橋区の学校教育政策は、子どもにとっても教職員にとっても、学校のつまらなさと不幸を生んでいると実感をもって語った。
板橋区は官製研修が多く、しかも教育内容についてではなく服務研修が中心であることも紹介された。教師を信頼しない区教委の非教育的姿勢については、参加者から驚きの声があがった。
なお、志村小がなくなる?小中一貫校問題を考える会の事務局会議は以下のとおり。板橋の教育問題に関心がある方の参加が待たれている。問い合わせは、くらしにデモクラシーを!板橋ネットワーク まで。
日時;2月20日(火)午後6時~7時30分
会場;板橋文化会館第3会議室
議題;学習集会総括、今後のとりくみほか
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