声を届けるデモクラシー活動
- コールさとう(佐藤壮広)
- 5月25日
- 読了時間: 3分
更新日:5月31日
4月13日、「戦争反対・憲法改悪を許さないオール板橋」が呼びかけた「オールいたばし暮らしデモ」が行われました。午後2時に大山公園に集合し、30分の開会集会の後、常盤台公園まで約40分間歩きました。暮らしの場のデモであり、商店街や路地をコールをしながら、時には個人がスピーチをしながらのデモ。悪天候ではあったが、80名を超える参加者が声を出しました。今回のデモをコーディネートをした学芸家・コールさとう(佐藤壮広)によるデモの参加記をお届けします。
経済産業省前テント、国会議事堂前、新宿や渋谷のストリート、沖縄・辺野古そして板橋と、私は「コールさとう」の名でこれまでにギターを鳴らして声を上げるデモにはたびたび参加してきた。その時々に感じたのは、コールの声とリズムのバランスがそのデモの充実度を少なからず左右するという現実である。少し細かく言えば、音響機器の良し悪し、コールする人の声、歩調(リズム)と合ったコールの節と音韻、行進する場所ごとの声の響かせかたなどが、デモのコールの鍵となるということである。参加者の行進する空間にどのような声のメッセージが響き渡るのかということも考慮し、デモを企画・運営することが、“デモ・デザイナー”の仕事の要となる。

3年前の2022年4月30日の板橋デモでは、上で述べたことを実装したデモ行進となった。商店街を行進する時には商店の軒先へ、住宅街を行進する時には門や玄関の向こうへと声を届けようという意識で、皆が声を上げた。これができたのは、デモの中心メンバーがコールの言葉についてアイデアを出しあい、「ここを通る時には、この言葉をコールしよう」などと事前に話しあったからだ。事前のミーティングでデモの起点と終点を確認し、通行するエリアにふさわしいコールの言葉を選び、それを声に出してみると、当日の動きについてより具体的に確認できた。
3年後の2025年4月13日のデモにおいても先の経験を活かし、事前のミーティングで企画メンバー一同がコールの言葉を紡ぎ出し、皆でデモ企画を練り上げることができた。「あなたの暮らしに安心を!」、「私の暮らしの安心を!」は住宅街で、「隠れ増税インボイス!」は商店街で、「潰すな 夜間定時制!」は定時制高校のそばでと、デモではそれぞれの場所に合ったコールが響き渡った。地域の課題を言葉にして、声に出して多くの人と共有することは、民主主義の行動の大切な一歩である。

米国の政治理論家で非暴力闘争を研究したジーン・シャープ(1928-2018)は、歴史上の非暴力の抵抗運動を細かく分析し、現代の我々も実践できる具体的戦略・活動プランを198点提示している(『独裁体制から民主主義へ 権力に抵抗するための教科書』ちくま学芸文庫)。その中には、5.告発や決意を宣言する、7.スローガン・風刺・シンボル、37.歌を歌う、38.行進をする、29.パレードを行うなどの案が含まれている。これらはいわばデモ行進に含まれる実践である。この中で私が注視するのはやはり「37.歌を歌う」だ。告発や決意の宣言は英語で言えば「declare」である。じつはこのdeclareには「うたう」という意味もある。
つまり板橋デモでわれわれが実践したのは、自分たちでことば(=詞)を紡ぎ出し、声に出して歌うという抵抗運動だったといえる。小雨の降るなか、板橋の皆さん、ジョニーHさんらと一緒に歌い歩くことができたことは、学芸家・コールさとうとして冥利に尽きる。
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