地域住民は本当に志村小・志村四中の小中一貫型学校を望んでいるのか?

 「志村小・志村四中の小中一貫型学校設置検討会」の第3回目に参加しました。20余人もの傍聴者が集まり、用意された傍聴席はかなり埋まりました。自民党、公明党、共産党、社民党の区議会議員の姿も見られました。板橋区で初めての小中一貫校の設置検討ということもあり、多くの人がいかにこの問題に関心を持っているのかがよくわかりました。


通学区域の変更で玉突き的に問題が生じる


 今回の検討会で議論になったのは大きく分けて2つのことでした。1つは通学区域・通学路の問題です。志村小の移転にともない通学距離が遠くなる子どもが出てくる一方で、現在通っている学校(北前野小と志村坂下小)よりも志村小の方が近くなる子どもも出てきます。


板橋区の学区マップ 志村小学校周辺
板橋区の学区マップ 志村小学校周辺

 検討会では、志村小が移転すると、志村坂下小の学級数が減ってしまい、現在の教育水準がむしろ下がってしまうのではないかとの懸念の声が検討会委員からあがりました。  志村小の移転は近隣の学校や地域に色々な影響をおよぼします。  学区の線引きが変わると、地域と学校の関係も変わります。同じ家に住む兄弟姉妹であっても、別の学校に通うことになる可能性もあります。通学区域と地域(町会・自治会の区域)との整合が取れず、学校と地域の関係がどうしても希薄になってしまうケースも出てきてしまいます。


 今回の検討会で一番に気になったのは、志村小の移転にともない通学距離が遠くなる子どものことです。現在の志村小の通学区域になっているところでも、実は志村小よりも志村二小の方が近いというところがあります。志村小が志村四中のある場所に移転するとなれば、これまで以上に通学が大変になる子どもが出てきます。小学校高学年や中学生であればまだしも、保育園や幼稚園を卒業したばかりの小学校1年生の子どもにとっては移転先の志村小に通うのは酷だと思います。なんといっても学校が遠くなります。夏は熱中症の危険性もあります。冬は日が落ちるのが早く、通学路は真っ暗になってしまいます。


 そうであれば、現在の志村小の学区で志村二小よりの区域は、新設される志村小ではなく、近くの志村二小の学区に変更になるのかといえば、そうではありません。志村二小には新たに子どもを受け入れるだけの余裕がないのです。学校の近隣に大型マンションが建てられ、子どもの数が急増したことがその理由として挙げられます。ちなみに、現在の志村小の学区で志村二小よりの区域に住む住民は選挙の時は、志村小ではなく、志村二小に投票に出かけます。


 検討会の結論は、今よりも遠くになるけれども、新しい志村小に子どもは頑張って登校するようにというものでした。ざっくり言えば、今よりも不便になるかもしれないがそれは仕方がありません、ということです。小中一貫校の設置の矛盾のしわ寄せは確実に子どもに来ています。


志村三丁目の駅前は通学する子どもにとって危険だ

 小学校1年生が新しい志村小に通うのには大きな危険を伴います。志村三丁目の駅前は、朝の時間帯、人や自転車が多く通り、通学路として狭い。登校班が復活したら、なおのこと問題です。そんな心配もあってか、検討会ではスクールゾーンの設置を求める声があがりました。教育委員会は前向きに検討するとのことでした。


 また、学校敷地の出入り口を首都高速側に設置し、通学距離を短くし、駅前を通らないようにする対応策もあがっていますが、苦肉の策という感じがします。説明会などではスクールバスを出すという話もありましたが、それはどうなったのでしょうか。今回の検討会では徒歩での通学が前提のようでした。こんな苦労をしてまで新しい志村小に子どもは通わなくてはいけないのでしょうか。


 小中一貫型学校の設置を実際に検討するなかで、複合的で一筋縄では行かない問題がたくさん生じることが見えてきました。通学区域・通学路の問題はその大きな一つです。子どもにとっては通学時間が長くなり、これまでよりも危険な目に遭う可能性も高くなります。それは子どもにとって不利益変更だと言えます。


 こう考えると、やはり志村小は現在の場所で立て替えるということが合理的ではないでしょうか。それが一番、うまく収まるやり方なのではないでしょうか。この後に触れる志村小の跡地利用の話を踏まえるとなおさらそう考えざるを得ません。


 現在地での志村小の校舎の建て替えには6年かかるという説明を教育委員会はいつも持ち出します。しかし、たった1社の見積もりでそう結論づけることの問題性はすでに説明会などでも明らかになっています。そもそも本当に6年も建て替えるのに時間がかかるのか。工期の短縮に向けた努力も説明も不足しています。


 私たちは志村小学校の耐震診断の結果を公開してほしい。耐震改修では対応できないのだとすれば、その根拠をちゃんと教えてほしい。パブリックコメント等で教育委員会に私たちの疑問はお伝えしています。しかし、現在至るまで回答をいただけていません。そのことは大変に遺憾です。この場を通じてこの点は明らかにしておきます。

志村小の跡地はサブグランド?防災の地域拠点?


 もう1つは、志村小学校の跡地活用に関する話が検討会で出ました。志村四中の校長先生は、「今でも(校庭が狭く)きゅうきゅうとしていているので、第二の校庭として活用したい、部活でも使いたい」旨の意見を開陳しました。「今でもきゅうきゅう」という言い方に志村四中の校長の実感がよく出ており、ここに志村小が移転してくることで子どもの教育環境は確実に悪化することを確信しました。


 それに対して、地域の町会の人は、防災の拠点としての機能をなんとか維持してほしいとの要望を出されました。地域の人びとのこれまでの防災へのこだわり、この町を自分たちで守っていくとの矜持を感じさせる発言でした。


 今回の検討会ではっきりしたことは、荒川が氾濫しても水没の危険性のない高台に位置している現在の志村小学校は避難所ではなくなってしまうということです。このままでは区民は安全な避難所を1つ失うことになります。志村小学校の避難所は、感染症対策の部屋、配慮が必要な方のスペース、着替えスペース、備蓄物資の保管倉庫なども考慮されている、素晴らしいものです。志村地域の人びとのいのちを災害から守る大事な砦であり、この砦は地域を愛する人たちによって維持されてきたのです。


 検討会では体育館だけでも防災拠点として使えないかとの声もありました。しかしながら、教育委員会の説明は、体育館と校舎部分を含めて避難所に指定されており、校舎を解体する以上、それはできないとのことでした。その代わりに、志村四中の場所にしっかりとした校舎を建設し、防災拠点として活用すると発言をしました。

 しかし、志村四中は荒川氾濫のハザードマップで水被害の危険性が実際に指摘されているのです。


板橋区洪水ハザードマップ 荒川版
板橋区洪水ハザードマップ 荒川版

 実際に荒川が氾濫し、志村坂下の住民が志村坂上に避難先を求めて坂を上がってきた人を救助した経験を持つ地域選出の検討委員の方からは、実際に高台を求めて住民は上がってくる。そういう想定をするべきではないかと、教育委員会の安易な態度に一考を促す発言もありました。教育委員会は本当に子どものいのちに真剣に向き合っているのだろうか。こんな教育委員会では子どものいじめの問題に責任ある対応ができるのだろうか。そんなことも心配になる場面でした。


本当に小中一貫型学校をいい学校にしたい気があるのか


 中川教育長は「地域とともにある学校」を目指して、コミュニティ・スクールを積極的に導入しています。しかし、本当に地域から愛され、地域を支える学校を作るのであれば、まずは地域の人びとにその土地や学校の記憶と経験を聞き取るところから始めなくてはいけないのではないでしょうか。


 今回の検討会での教育委員会の説明は、地域の人びとが防災拠点として愛着を持ってきた志村小を行政の都合で取り上げてしまうという印象がどうしても拭えませんでした。言い換えれば、本当に今回の計画は地域の人びとが納得と共感、深い理解の上で進められているのか。そこには大きな懸念があるということです。


 傍聴をしていても、板橋区で初めての新しい小中一貫型学校づくりにチャレンジするのだというワクワク感を検討会全体に対して感じることはできませんでした。新しい小中一貫型学校の想定される学級数を尋ねる検討委員の質問に対しても教育委員会は明確に答えませんでした。本当に子どもの教育のことを考えて、十分に練られた計画なのか心配です。


 小中一貫型学校をとにかく作るというミッションが与えられ、そのミッションの意味を十分に納得もしないまま、とにかくこなさなくてはいけないというやり方は民主主義的ではありません。地域の人びとや保護者、卒業生、在校生、あらゆる人たちがワイワイ言いながら、行政と対話しながら新しい学校を作っていくことこそが、本当の意味でのコミュニティ・スクールではないでしょうか。


 まずは、志村小と志村四中の小中一貫型学校建設に前のめりになるのではなく、さまざまな問題が露見している現在、思い切ってその計画を見直すことが必要ではないでしょうか。それが真に志村の地域を愛し、子どもの笑顔を守り、学校教育を大切にすることなのではないでしょうか。


 なお、次回の検討会は2021年9月下旬から10月上旬とのことです。

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