統一地方選挙の前半戦の投開票は4月9日だった。全国的に絶望的に投票率が低いと言われて、実際にそうであった。市民運動に関わっている者からすると、投票率が低いのは「運動の仕方が悪い」と言われているようにも感じてしまう。
自分の住む自治体の政治への関心はなかなか持ちづらい。国政とは違ってマスコミでは取り上げられない。仕事や日々の暮らしに追われているなかで、足元にある区政が遠く感じられてしまう。こんなところにも、国政選挙と比べて投票率が低い理由があるのだろう。
しかし、私たちのいのちと暮らしに直結している地方自治。区の行政の長である区長と、区政を監視する区議会の議員を選ぶ、やはり大事な選挙。板橋区では4月23日投開票日となっている。
地方では立候補者が少なくて無投票という自治体もある。だが、板橋区は今回46人の区議会議員に対して70人を超える立候補がある。区長選は現職の坂本たけしさんが5期目に挑戦。それに対抗して、40歳・女性の南雲由子さんが無所属で立候補した。
くらしにデモクラシーを!板橋ネットワークでは、4月7日(金)に「会ってみなきゃ始まらない。区長選に立候補を予定している南雲由子さんと話そう」を開催した。
短期間の宣伝だったが、初めて出会う方もあり、一緒に車座になって、区長候補の南雲さんとの対話が始まった。30名近くの参加者が集まった。 まずは南雲さんから簡単な自己紹介。 2011年に東日本大震災および東京電力福島第一原発事故があった。それにもかかわらず、その後の選挙でも投票率は低く、人びとの声は政治に届いていない。それまで培ってきたデザイン能力を活かし、選挙ポスターやチラシのデザインや選挙実務に携わるようになり、2015年の板橋区議選に立候補し、初当選した。
区議選に立候補を決めた時も、そして今回の区長選の場合にも、「コップの水があふれるように」決断したという。自ら動物に例えるならば「バク」だという南雲さん。一見するとふわっとして捉えどころがない感じにも見えるのだが、「コップの水があふれるように」決断したというところに、一度決めたらもう引き返さないという芯の強さを感じることができた。
次に今回の区長選で掲げる「6つの重点政策と100の政策」の話に移る。6つの重点政策は以下の通り。
① 小中学校給食費の無償化&「当事者」目線のお育て支援
② 健康で安心して都市を重ねる活動や住まいの支援
③ 区立福祉園の民営化見直し&未就学から親なきあとまで安心の地域づくり
④ わかりやすい情報発信と住民参加のまちづくり
⑤ 聴き専門官を設置し、多様な危機への体制を強化
⑥ 区長退職金廃止・区長給与2割カット
余談だが、ポスター写真の南雲さんはまっすぐに前を見据えてきりっとしている。だが、話してみると意外にフツー。笑顔が素敵な庶民的な人。その印象は私だけでなく、多くの人が抱いていたようだった。
ここで休憩に入る。休憩中に参加者は南雲さんへの質問を一つ書いて、「質問箱」に入れる。休憩後は、それを南雲さんが拾い上げて答える。ラジオパーソナリティがリスナーのハガキを読むように進んでいく。例えば、こんな感じ。
Q.板橋区の令和4年度の施策事務事業評価をみました。全68施策中9施策しか評価公開されておりません。事務事業評価も全680事業中111事業しか評価公開されておりません。全ての事業に対して評価公開してください。公開されていない事業の総額約1200億円がどのように使われたか知りたいです。
A.私も知りたいです。全ての事業に対する評価公開はどんどんやりましょう。
そのほかに、「補助26号線道路」「大山の再開発」「タワーマンションの問題」「タワマンと気候変動」「多様なニーズの子どもへの支援は?」「投票率アップのためには?」「施設での虐待防止」「小学校の校内暴力」「小中一貫校問題」「若者支援」「高島平のまちづくり」「政党との関係は?」「精神障害者への支援」「板橋で一番変えたいところ」「現・坂本区政で一番変えたいところは?」「チーム板橋みらい とは何?」「東上線立体化問題は?」「荒川氾濫と減災」「区行政システムや副区長はどうする?」「板橋で一番変えたいところは?」「空き家対策」など、参加者からの質問すべてに答えた。テンポよく、区議会議員の経験があるだけに具体的であった。
印象に残った南雲さんの発言をもう少し紹介したい。
坂本現区政で一番いけないことの質問には「対話」をしないこと。机を挟み、住民と行政が対峙するような板橋区の住民説明会のスタイルにそれは象徴される。 性教育は人権の問題であり、子どもの発達段階に応じた、丁寧でしっかりとした取り組みが必要。 サッカーの練習のために公園や廃校の校庭の見直しの陳情を出した板橋区の当時小学校6年生は「オレラには間に合わないかもしれないけれど自分より小さい子たちのために陳情を出す」と言っていた。これこそ民主主義。先行する自治体に学んで、予算執行の権限ある若者議会を実現したい。子どもの意見表明権を大事にしたい。
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