区議会の論点:首都高5号線を通る核燃料輸送車の危険性

 私たちの暮らしに密接に結びついている区政。板橋区議会ではどんな議論がなされているのか。その議論からは私たちの暮らしの問題点が浮かび上がります。区議会の論戦をここに採録し、板橋区の諸問題を眺めていきます。

<脱原発特集 第2弾> まもなく東日本大震災から10年目の3月11日を迎えます。あの頃の議論を振り返りましょう。


 2012年6月11日に開催された第2回定例会で、民主党の中妻じょうた議員が柏崎刈羽原発で使われる核燃料が陸路輸送の際に板橋区を通過するリスクと防災計画について質問していました。


中妻じょうた議員:

 現在、関西電力管内の福井県大飯原発の再稼働が焦点になっておりますが、東京電力の事業計画にも柏崎刈羽原発の再稼働が盛り込まれております。去る5月11日の東電のプレスリリースには、このようにあります。「柏崎刈羽原子力発電所については、今後、安全・安心を確保しつつ、地元のご理解をいただくことを大前提として、今回の申請における3年間の原価算定期間においては、平成25年4月から順次再稼働がなされるものと仮定しております」と、このように示されております。


柏崎刈羽原子力発電所の地図
柏崎刈羽原子力発電所の地図

 関電管内では最大で10数%の電力不足が懸念されているという背景がありますが、東電管内では事情が異なります。経産省見込みによりますと、8月の東電管内の最大電力供給量は5,706万キロワットとされています。そして、昨年の東電管内の最大電力使用量は約5,500万キロワット、一昨年の最大電力使用量は約6,000万キロワットとなっています。一昨年を上限値と見れば、最大で電力が約0.9%不足すると表現できますが、東日本大震災以前と同様に電力が使われるとは考えにくく、東電管内においては原発を再稼働させなくても十分電力は足りると、私は考えています。


 それにもかかわらず、柏崎刈羽原発を再稼働させようというのは何ゆえか。この議論に、板橋区も当事者として参加すべきだという趣旨で、幾つかの質問をさせていただきます。

 福島第一原発事故以前は、「地元のご理解をいただく」ということは、原発立地自治体の理解を得るということを指していました。しかし、原発事故の現実は、「地元」という言葉の再定義を迫っています。ひとたび原発事故が起これば、立地自治体だけの問題でなくなることは既に自明です。特にこの板橋区では、柏崎刈羽原発で使われる核燃料が区内を通過して輸送されているという事実があります。

 1985年に柏崎刈羽原発が営業運転を開始して以来、核燃料が、横須賀を出発して板橋区内の首都高速5号線を通過し、関越道を経由して柏崎刈羽原発まで輸送されております。柏崎刈羽原発への核燃料輸送の監視を長らく続けてきた区民の方から情報提供をいただきまして、福島第一原発事故後も、少なくとも昨年10月17日と11月16日の2回、核燃料輸送が行われたとのご指摘をいただいています。


核燃料輸送経路
核燃料輸送経路

 首都高5号線で大きな事故が起こりやすいことは、よくご承知のことと思います。2008年8月のタンクローリー炎上事故はまだ記憶に新しく、今年1月にもトレーラーの横転火災事故が起こっています。このような重大交通事故に核燃料輸送車が巻き込まれないとは、だれが保証できましょうか。


 また、阪神・淡路大震災において、阪神高速が横倒しになったあの衝撃的な映像をご記憶の方も多いと思います。現在、マグニチュード7クラスの首都直下型地震が発生する確率を、政府の地震調査委員会は「今後30年以内に70%」、東京大学地震研究所は「4年以内に50%以下」と試算していますが、首都直下型地震が発生して首都5号線が倒壊し、それに核燃料輸送車が巻き込まれるということはないと、だれが言えましょうか。原発を語る上で、「想定外」という言葉を口にすることは、もはや許されません。

 区長は、板橋区内を通過して核燃料輸送が行われることについて、どのような見解をお持ちでしょうか。そして、現在、改定作業中の板橋区地域防災計画の中で、核燃料輸送のリスクについてはどのように対処すると定められているでしょうか。特に住民の避難については板橋区に一義的な責任があるものと理解しておりますので、この点を踏まえての区長の見解をお伺いいたします。

 そもそも、このような巨大なリスクを板橋区がこの先ずっと甘受していくことは、果たして正しいのでしょうか。核燃料輸送のリスクを抱える板橋区は、柏崎刈羽原発再稼働について、意見を表明すべき当事者たる自治体なのではないでしょうか。区長は、当事者たる自治体の代表として、柏崎刈羽原発再稼働の議論に参加する意思があるでしょうか。お答えください。

 そして、板橋区も全国の基礎自治体と連携して、日本が目指すべき方向は脱原発であると明確に主張していくことが、区民を原発リスクから守るためのあるべき行動だと私は考えています。4月28日には、全国64市区町村が「脱原発をめざす首長会議」を結成しました。東京からは世田谷区、武蔵野市、狛江市が参加しています。板橋区も、原発再稼働に関する当事者として脱原発首長会議に参加すべきではないでしょうか。

 そして、ちょうど1年前の一般質問で申し上げたとおり、原発推進の背景には将来的な核武装が存在してきました。坂本区長は先般、板橋原水爆禁止協議会が行う「核兵器のない世界を」という署名活動に対して署名をされたと聞いております。崇高な板橋区平和都市宣言の理念にのっとり、坂本区長の口で脱原発都市宣言を行うべきと考えますが、1年が経過して、区長のお考えに変化はないでしょうか。お答えをお願いいたします。


坂本健区長:

 最初は、板橋区内を通過する核燃料輸送について、区長としての見解についてのご質問であります。核燃料の輸送につきましては、原子炉等規制法に基づき、十分な安全対策が確保されているものと考えております。


 次に、地域防災計画への反映についてのご質問であります。核燃料輸送に係るリスク管理につきましては、法に基づき、国と関係機関等が実施をすることであるために、地域防災計画の範囲外であると考えます。震災発生時において、輸送車両の事故等が発生の場合におきましては、区は地域防災計画に基づき、救助や警戒区域の設定、避難指示等、必要な対応を実施するものであります。


 次に、柏崎刈羽原発再稼働への意思表明についてのご質問であります。今後、柏崎刈羽原発の再稼働を議論する場が設けられた場合に、その設立趣旨、目的及び構成員等を勘案し、また、東京都や他区の状況も把握した上で、参加についての是非について、決定をしてまいりたいと考えております。


 次に、脱原発首長会議への参加についてのご質問であります。原子力発電の再稼働に当たりましては、国や電力会社などの実施する安全対策と十分な情報開示が前提であると考えます。その上で、原子力発電所の事故の深刻さを踏まえ、健康面のリスクや社会経済活動への影響など、広範な国民的意見の集約、所在する市町村及び県などの自治体住民の合意形成などが必要であると考えます。こうした観点に立ちまして、「脱原発をめざす首長会議」の活動内容、参加自治体の主張、国や関係自治体の動向も注視しながら、今後の対応を検討してまいりたいと考えております。


 次に、脱原発都市宣言についてのご質問であります。太陽光発電などの再生可能エネルギー、天然ガスなどの化石エネルギーは、環境の変化や国際情勢の変化による市場における燃料費の高騰などの点で不安定さがあり、安定的な電気エネルギーの供給と価格面において、日本経済や国民生活に対するリスクへの懸念が現段階では払拭できないと認識をしております。このことを勘案しますと、区が直ちに脱原発宣言を行い、原子力発電以外のエネルギーだけに依存していくことは、現時点では困難であるとも考えています。


◆参考資料


日本の原子力発電所マップ

https://www.nippon.com/ja/features/h00238/


脱原発をめざす首長会議

http://mayors.npfree.jp


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