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絶対に負けない、とやっぱり無理かも、このあいだで揺れていました

最終更新: 2月25日

  板橋区公衆喫煙所問題とは

 

 行政機関や病院、学校など第一種施設に対し、2019年7月1日より受動喫煙防止を定めた改正健康増進法が一部施行されました。

 

 板橋区は同法施行に合わせ、区役所本庁舎の隣接地に屋外のコンテナ型公衆喫煙所を設置し、7月1日から運営を始めようとしていました。この喫煙所の設置場所は区役所の敷地内でしたが、わざわざ区役所の敷地から分割して、板橋区は公衆喫煙所を設置します。


 この時、東京都は23区が新たに設置する公衆喫煙所に対して補助金(10/10、全額)を支給することになっていました。補助金対象となる公衆喫煙所は第一種施設(区役所本庁舎)の敷地外である必要があります。区役所の敷地から分割して設置したのはそうした理由からです。

 補助金申請の期限は年度内。板橋区は2020年3月31日までにどうしても運用を開始したいとの姿勢を強く持っていました。  

 

 設置場所は都営三田線の出入り口に面しています。喫煙所の排気口のすぐ先には地下鉄の出入り口となるエレベーターがありました。小さな子どもや高齢者、障がい者などの利用が多くあります。近隣には医療施設や薬局、障害福祉施設、子どもが通う学習塾。受動喫煙の害は避けられません。しかも区は十分に公衆喫煙所の設置について説明をせず、既成事実を作ってそれを追認するようなやり方をしました。

 それに対して近隣住民が喫煙所撤去を求めて陳情署名運動を展開します。多くの反対署名が集まり、議会を動かします。区役所本庁舎に隣接する公衆喫煙所は一度も使用されないまま、コンテナは板橋区役所前から高島平に移動し、2020年3月2日に高島平公衆喫煙所が開設される運びとなります。  

 

 残念ながら区民が区の決定を覆せることはそうはありませんが、この事例は区民が粘り強く働きかけを行い、区政を変えた貴重な取り組みでした。

 今回は喫煙所撤去を求める取り組みの中心にいたメンバーにメール・インタビューを行いました。 参考文献

石田雅彦 Yahoo!ニュース、2019年6月25日

なぜ「板橋区役所」元敷地内に「喫煙所」が設置されたのか~改正法が骨抜きに」 石田雅彦 Yahoo!ニュース、2019年8月27日

「板橋区役所」隣接「公衆喫煙所」問題が解決へ



―公衆喫煙所問題が起きる前はどんな生活をされていたんですか? 選挙は皆勤に近いと思いますが政治、行政のあり方などをちゃんと考えたことはありませんでした。「くらデモ」の皆様とは一番離れた場所にいたと思いますよ。

―公衆喫煙所問題はどんな感じで始まったんでしょうか?

 私は公衆喫煙所が設置された隣にあるビルを所有していますが、ビルと区役所の間の狭い空間に喫煙所の建設を計画していることをテナントの方に教えてもらいました。それが事件の始まりです。


 ビルのオーナーなのに!(笑)、私のところに直接区からの説明がないという、担当者に問い合わせると誰の持ち物かわからなかったという回答でした。こちらは登記もしているし、税金もきちんと納めているのに考えられません。これでは不信感しかもてません。


 テナントの方から区のお知らせを見せてもらうと排気口は地下鉄のエレベーター入り口に向いている。うちのビルには調剤薬局、クリニックしかも耳鼻咽喉が入っています。未成年や児童が通う施設もあります。ちょっとお粗末じゃないかと。


 「絶対にやめさせてやる!」とその時に心に誓いました。でも戦う相手がちょっと大き過ぎるとは思いました。いきなりのラスボス戦でしたから。  実家が設計事務所を営んでいたこともあり、政治家や板橋区との関わりもそれなりにはありました。区議会議員をはじめ、都議の方、国政に関わる方も存じ上げていました。もちろん坂本区長ともお話をしたことがありますよ。


 ただし、父の影響もあり、政党にこだわって考えることはありませんでした。特定の政党を応援するということもありませんでした。  そんななかで色々な党派の議員さん達と連絡取り出しました。一定の政党に偏ることなくあらゆる方とお話することを心がけていました。そうしなければ公衆喫煙所の撤去はできないと思ってもいました。


―喫煙所撤去に向けて、実際にどのような動き出したのですか?


 ほとんどのかたはそうだと思いますが反対運動は初めての経験なのでなにをしたらよいのかわからず、相談に乗っていただいた方のアドバイスはきちんと受け止めました。陳情なんかしてもだめだよと、裁判に持ち込むのが良いと大勢の方に言われました。裁判はどうしても気が進まず、陳情署名運動に取り組みます。


 大きな政党に属している方は言ってこられても困るだろうということは、十分承知していましたが、特に近隣地域を地盤にされている区議の方には時間をかけて、話を聞いていただくようにしました。この問題を地元の問題として受け止めてもらいたいと思ったからです。


 喫煙所の問題が終わった後も何かの折には連絡をくださる方もいらっしゃいます。私の社会が広がったことを考えると、間違った道ではなかったと思います。


―自作という公衆喫煙所に反対するポスターもインパクトが強く、話題になりました。


手作りポスター デザインA

 区議の方すら設置場所を知らなかったと言われるほど誰も知らない計画でした。これは現地にポスターを貼って知らせるしかないと思いました。ビルの上から下まで垂れ幕をつけるつもりで、とりあえずポスターを貼りました。



 そのポスターが強烈な仕上がりになって、これ以上のものは作れない気がして最後までこのポスターに頼ってしまいました。家族で考えて作ったものなので、かなり気に入っています。歩いている方が立ち止まって見入ってることもありましたので成功ですね。



手作りポスター デザインB

―署名を集めるのって大変じゃないですか?


 街頭に立ってマイクで話をして集めるということではなく、ひたすら口コミ、知人に問題の経過や問題点がわかるお願いの文章と署名用紙をお渡しし、お願いしました。内容が皆さまの心に響いたのか「集めてきてあげるね」になり、最終的には3,200を超える署名を集めることができました。

 





 Twitterを立ち上げたのでそこを介して全く面識のない方も送ってきてくださったことは驚きでした。その用紙を持って区議会事務局に行った時は、気持ちが高揚しました。 ー運動団体が署名を下に下ろして組織的に集めるのとは全く違うやり方ですね。草の根のレベルで市民が一人ひとりの声を集める、拾って区政に届ける迫力があったんじゃないですか?

 今振り返ると、今まで面識のなかった多くの方と知り合いになるきっかけができました。これからもお付き合いしたいと思える素敵な方との出会いというご褒美もありましたし、これまでに面識のあった方でも、表向きなお付き合いからきちんとお話しできるようになった方もおられます。

 区議会の区民環境委員会で審議されることになり、委員の方たちに渡すための資料作りにもエネルギーをつぎ込みました。板橋区以外は喫煙所をどのように作っているのか、都からの助成金をもらう予定でいるのかなど調査し資料としました。  各区役所に電話をかけこちらのことをお話すると、どちらの区も親切に教えてくださいました。電話口の担当の方はみなさん、板橋区のやり口に呆れていました。


―うまくSNSやYahoo!ニュースを使って反対の世論を作っていかれましたよね? 

 

 運動するならSNSぐらいしないとねということで、匿名性の高いTwitterを選択して、開設しました。

 喫煙に関しては様々な意見があり、そこで議論が起きてしまうと手に負えなくなると思っていましたので、今回の公衆喫煙所の設置場所がダメだという論点を強く押し出し、議論の軸がぶれないように心がけました。

 その頃、Yahoo!ニュースで改正健康増進法では違反者に対し、50万円以下の罰則が適用される。官公庁、地方自治体も対象になるという記事が掲載されました。その記事を書かれたライターにも取材していただきました。

 Yahoo!ニュースで記事になったあたりから、この問題が多くの方に知られるようになり、流れが変わる手応えを感じました。その後の住民説明会には大勢の方に出席していただくことができました。出席者の多くは私たちも知らない方でした。運動の広がりを感じました。

 テレビの取材もYahoo!ニュースがきっかけで受けることにもなりました。道を歩いていてもテレビにでていたでしょう、と、話しかけられました。テレビの影響力の大きさを痛感しました。住民説明会のあとになりますが新聞にも取り上げてもらえました。

 こうやってメディアで取り上げられることで問題が大きくなっていく。議会も区も注目されていることを意識するようになっていきましたね。

―ひとりで始めた運動が、色々な力学が働き、大きなうねりになっていく。聞いていてワクワクしますね。そして、実際に公衆喫煙所開設を中止に追い込んだのはすごいことですよね。

 絶対に負けない、とやっぱり無理かも、このあいだで揺れていました。周りからも行政が計画して、もうすでに出来上がっているものを覆した話なんて聞いたことないと言われました。今から思うとすごいことだと思っています!

―でも、そのなかで嫌がらせとかもあったんじゃないですか?

  Twitterでタバコが大好きな方に絡まれたりは、何度かありましたがあまり気になりませんでした。そんな方も絶対にブロックはしないようにしました。署名を集めてくれるということで2時間くらいお話をしたのに、ご自分のすら書いてくださらないびっくりな方もいらっしゃいましたね。当時は前に進むことで夢中だったので、嫌な気持ちにもなる余裕すらなかったようです。

―喫煙所は最終的には高島平に移設されました。それについてはどう思いますか?

 

 喫煙所の建設費用はほぼ1,000万円です。今回は移設費用もかなりかかっています。ランニングコストに関しては運用を始めないとわからないと担当者が説明していましたが、かなりかかることは間違いありません。運用前にランニングコストが計算されていないこともどうかと思います。1,000万円は都からの補助金であることを区は強調しますが、それも私たちからの税金であることには変わりません。


新型コロナウイルス感染症防止のため、閉鎖中の高島平公衆喫煙所
高島平駅公衆喫煙所(感染症防止のため閉鎖中)

 高島平も近くに診療所や調剤薬局があり問題点は多くあるように見えますが、直接の当事者ではないので発言はひとまず控えたいと思います。ある区議がおっしゃるには高島平では素晴らしいものができたと大喜びだそうですが。どうなんでしょうかねえ。一度だけ近くを通り遠目に見ましたが環境に馴染んでいるとは、言いがたいものがありました。


―運動のなかで区政の問題点も見えてきたのではないでしょうか? 


 この喫煙所を作るにあたり、区役所の敷地を分割したことがわかりました。公共の施設敷地には喫煙所をつくれないから敷地を分けて、そこに建てればいいよね。そして、両隣には子どもや具合の悪い人も来ているけどフィルター通しているんだから構わないよね。こんな感じでことが進められたのだと思います。

 どなたが考えたのかわかりませんが土地登記に関しては区長の判断なしではできません。それを止める人が誰もいなかったことに恐怖すら感じます。


 区長への手紙を何度か出し、お返事も頂戴しました。存じ上げない方が、公衆喫煙所とは別の問題でTwitterにアップされていた区長からの手紙とほとんど同じ文面だったことにはあきれ返りました。何よ、使いまわしているのって(笑)。

―公衆喫煙所問題の前は「一番離れた場所にいた」と言っている「くらデモ」に関わることになってどうですか?

 区民であることにこんなに真剣な方達がいらっしゃることに衝撃を受けました。とにかく知らないことばかりなので新鮮です。 

 議会の仕組みにしても何も理解していませんでした。陳情が何かもわかっていませんでした。4ヶ月間でたくさんのことを学習しました。普通(笑)の正しい良き区民になろうと思います。

 私たちを取り巻く現在のコロナ禍の状況は、なかなか体験できることではありません。体験しないで過ごせたら幸せですが。公衆喫煙所問題の時も、これまでにしたことのない運動経験、政治経験をこれからの毎日にいかせるようにしようと思いました。自分も含めて、非常時こそ本性が現れますからね。そして、今の社会や政府がどんな対応をするのかしっかり見て、聞いておこうと思います。


―最後に仲宿商店街に近くにお住まいとのこと。仲宿商店街は好きですか?


 はい、大好きです。以前からある商店はよく知っているので、落ち着きます。どこの商店街も同じような状況だと思いますが長く営業されていたお店が閉店し、新しいお店に変わっていっています。このことは決して悪いことばかりではありませんが寂しいと思うこともありますね。 (聞き手・構成  編集部)

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