• 中俣 保志(香川短期大学教員)

「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」を読んで―市民参画と情報公開がキモ

最終更新: 2月25日

 全国各地で行われている「まちづくり」活動などをリサーチしてきたものの一人として、公開されている「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」を拝見していくつか感じたことを記載してみました。現地の生活実感などが無いのでその点はご了承下さい。



 また既に伊藤久雄さん(公益社団法人 東京自治研究センター理事、認定NPO法人まちぽっと理事)の記事でも取り上げておられている論点は重複を避けるために割愛しております。ただ一点付け加えますと、パブリックコメントの募集期間について、伊藤さんも指摘している通り、意見募集期間についての募集期間が非常に短く、重要なテーマであるだけに、拙速な印象を与えかねない点は強調しておきたいかと思います

1.「都市づくり」という用語について


 伊藤さんも既に指摘されていましたが、「都市づくり」と言う用語がいくつか散見されます。私が知る限りこの用語が出てきましたのは、東京都の設置した審議会の「東京都都市計画審議会 都市づくり調査特別委員会」が最初ではないかと思います。こちらの議事資料の中の「諮問文」を読むと、舛添前知事時代(2015年9月)に諮問が開始され、2040年の東京都を見越した「都市づくり」が「東京都都市計画審議会都市づくり調査特別委員会(以下「調査委員会」)」において行われ、答申がなされています。


 詳細は省きますが、この時点では、2020年東京オリンピックが実施予定であり、誘致に見合った都市機能や観光上の様々なインフラ整備、新たなる再開発なども見越しての「都市づくり」が目指されており、今回の一連の板橋区における「板橋区都市づくりビジョン」に関連する、東京全体の都市計画についての一つの基本方針になろうかと思います。ちなみに調査委員会のメンバーは所謂学識経験者で占められており、議事等の資料を見たり私自身もこうした委員会のメンバーでの参加経験から、おそらくは、事務局が作成した基本方針案に基づき専門家の観点から補足・修正すべき点の示唆を与えるような委員会であったのではないかと考えます。


 ここでポイントなのは、いわゆる2020東京オリンピックを前に、都市再開発事業も含めた様々な都市計画上の課題に対して「都市づくり」と言う用語が用いられたという点かと思います。結果として、東京五輪は延期となっておりますが、何らかの形での都市開発(場合によっては再開発の地もあり得ますがここでは両面を含意すると思ってください)は今後も都内で課題として継続されるものであり、同時に開発の計画も引き続いていると言えるでしょう。ただし、後ほど別課題で記載しますが、都市開発にはつきものの土地の問題については地域によってはいくつか変動があるようで、いわゆる地代の変動が散見されつつあるようです。したがって、舛添前知事が意図していた時と同じように今後も都市開発が進むかどうかという点は、今後検討する必要があるものと思われます。


2.まちづくり協議会について


 「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」の中で私が今回注目したのは、まちづくり協議会の設置についての条文でした。すでに伊藤さんが以前触れておられましたが、届け出・登録・承認と三つのまちづくり協議会の設立が盛り込まれていますが、先進地である高島平地区ではすでに稼働しているようですし、どこまでの役割がなされて、それと様々な都市計画のどこまでかかわるのかが案の条文からだとかなりわかりづらいかと思います。公開されている『板橋区都市づくりビジョン』の「第3章 都市づくりの考え方と方向性 2-1 共通テーマ 協働とマネジメントが進んだまち 基本的な考え方」40ページのところで「まちづくり協議会等のネットワークを形成し、都市づくりに関連する施策や事業の評価・改善、多様な主体による道路や公園等の維持管理・活用等のマネジメントを推進します。」とあります。また同じページの少し下のところに先駆地域の事例紹介をしている箇所で「◇まちづくり協議会等が主体となった都市づくり」とあり、「区民主体の都市づくりを進めるため、話し合いの場となるまちづくり協議会等を設立し、身近な地区の将来像を示したまちづくりプランの検討を行い、区と協働して都市計画を策定します。」とありますが、区とまちづくり委員会の関係、まちづくりプランと都市計画 [ i ] との関係など、更には行政の協働におけるそれぞれの役割など、詳細は不明です。


 さらに、板橋区の行政が前提にしている地区ごとの分析を見ると、かなり各地区の状況が異なります。単身世帯が多い地区、家族ずれ世帯が多い地区、家族ずれが多いが18歳人口が少ない地区、高齢者率の高い地区、移住者が多いが高齢化率も高い地区など、こうした地区ごとの特徴が顕著な場合に、それぞれの地域でのまちづくり協議会の担い手像がかなり多様になる可能性もあり、支援も行政が行うとのことですので、この辺りの地区間の住民層の違いがまちづくり協議会の運営という点でどのように生かされてくるのか、行政では検討が必要ではないかと感じました。


 日本全国で、まちづくり協議会の名称の団体を発足させて、今後の住民の地域的な意見集約を住民参画の一環として行ったり、協働する場面を呼び掛けて行政として地域経営の効率改善を図ったりする基礎自治体も増えてはいますが、内実の点では地域ごとの到達度合いがばらばらで、内実を豊かにするためにもより詳細な区民への情報開示が必要かと思います。また、私が見た限り、先進地区では、そうした呼びかけ時点を含めた情報公開の課題(オープン・ガバメントと言ってもいいかもしれません)に取り組んで市民参画の意識向上や効率性をより充実したものとして目指していると言っていいと思います。その観点からも、パブリックコメントの募集期間の短さと相まって、市民協働を行う姿勢が見えにくい点は指摘できるかと思います。

3.土地問題の解決や大規模店舗開発の問題に関して


 私が前節で取り上げたまちづくり協議会でもそうなのですが、実際に町の開発事業では、土地収用やその土地を利用する際のルールの作成やそのルールをどのように守らせるのか、もしそのルールが破られた際にはどうすればよいのか、などの枠組みを、土地開発法を踏まえながら一定の制度を運用してきました。


 例えば、建築協定という形で行政自身とは別に私人間の契約に基づいてそれを踏まえた都市計画を行う場合と、地区計画のようにある程度の絞った該当する地区において土地の利用を住民ベースで提案してそれを行政が計画として認めるというものなど、こうしたものが都市計画には含まれます。このような都市計画法上の既存の調整組織や制度運営には課題もあったのは事実ですが、これらの制度との関係が、「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」の中では明瞭ではなく、果たして円滑な運営が可能なのかどうかこの点は行政も明らかにすべきかと思います。


 更には、「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」では「大規模土地取引行為の届出等」という項目が出てきます。大規模店舗の開発に対して、通常今までの対処の都市計画上の制度も運営してきたわけですが、それらの運営してきたものの蓄積を、どのように新しい制度で引き継がれているのかが、公開された資料だけでは不明瞭なところがあります。

4.最後に


 いずれにせよ、新たな課題に向かって何かの制度を新設するという点はいいのですが、そうであればこそ、別の箇所でも触れましたが、情報公開が重要になるかと思います。私が調査したある市の市長の方から、「少子化時代に入って担い手の高齢化が進む中で、公設事業は情報公開を徹底していかなければ、市民参画を得られない、市民参画と情報公開は地域運営の両輪です。」とのお話を頂きました。これは、地域的な様々な事情を超えて、現在取り組まれるべき一つの指標ではないかと考えます。


 そうした意味で、「(仮称)板橋区都市づくり推進条例案の概要」とそのパブリックコメントの募集方法も含め、市民参画と情報公開の点で、まだまだ最良な方法があるのではとの概観を持ちました。

<参考資料>

東京都都市計画審議会 都市づくり調査特別委員会

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/keikaku/shingikai/iinkai.htm

同上 諮問文 平成27年9月2日

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/keikaku/shingikai/pdf/iinkai_shimon.pdf

『板橋区都市づくりビジョン』

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/379/vision.zentai.pdf



[ i ] 都市計画上行政が策定したものでここに地区計画などが含まれている図が『板橋区都市づくりビジョン』の8ページに含まれています。

都市づくりビジョン8ページの図

中俣保志(なかまた・ほし、香川短期大学教員)

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